表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「奥様は雪女」(セーラー服と雪女 第11巻)  作者: サナダムシオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/9

④ 貴重な才能の救出

 ニコラ・テスラとひとしきり談笑した後、彼に暇を告げた二人はクルマに戻った。

 運転席に座ったサン・ジェルマンが、いつになく思いつめた表情をしているので、京子は気になって声を掛けた。


「ねえ、貴方、顔色悪いわよ。大丈夫?」

「ああ、心配ないよ、京子さん。もう決めたことだから。実を言うと、これから起こす私のアクションは、初めての事って訳でもないからね。」


「何をするつもりなの?」

「何でもないさ。ちょっとした歴史改ざんだよ。いや、表面上は誰も気づかない。だから誰にも迷惑はかからないはずだ。」


「貴方、まさか…。」

「そのまさかだよ。」

 そう言うと彼は、すぐにコントロールパネルに向かって、次の目的地の座標の入力を始めた。

 1943年1月7日22時00分。北緯40度47分西経73度57分

 

 シルバーのビートルは直ちに上昇し、時を越えてジャンプした。

 出た場所はニューヨーク、マンハッタンの街中だった。

 路肩にクルマを停めると、二人はすぐさま、目の前のニューヨーカー・ホテルに入る。


 いつもは何が起きても余裕しゃくしゃくのサン・ジェルマンが、エレベーターのボタンを押すのももどかしく、気が気でない様子を見せている。それは、京子にとっても極めて珍しい姿だった。

 

 とある部屋の前にたどり着くと、彼はドアを二回、少し間を開けて三回ノックする。

 するとすぐに中から扉が少しだけ開けられ、先程より年老いたテスラが顔を出した。

「ああ、キミたちか。よく来たね。入りたまえ。」


「夜遅くに申し訳ない。どうしても今夜会っておきたかったので。」

 サンジェルマンがそう言うと、テスラは何か予期していたようだった。

「フィラデルフィアでの実験のことかね?」

「失敗でしたね?」


「私はまだ、実行には早すぎると言ったんだが、海軍が功を焦っていてね。」

「物体をレーダーに映らなくする技術の延長としての、実際のステルス化と瞬間移動の技術。結果は大惨事になりましたね?」


「その通りだとも。せめてあと半年待ってくれれば、もう少し安全性を高められたものを…。」

「その後、軍部ともめていますね?」

「うん、計画実行グループから追い出されたよ。」


「彼らは今夜、金の卵を産むニワトリを殺して、卵を奪うつもりです。」

「…ほう。」

「歴史上、そういうことになっているのです。」

「そうなのか。」


「今から私と一緒に来てください。」

「しかしキミは、私の見ている幻なのだろう?それに、確か歴史の改ざんは、犯罪ではなかったのかな?」

 さすがは❝タイム・トラベル❞の父コラ・テスラ。痛いところを突いてくる。


「例え時間監察局に睨まれようとも、高次元人からマークされようとも、目の前で、みすみす人類史上最高の才能を持つ頭脳が奪われるのを、放ってはおけません。」

「それはありがたいが…私を買いかぶりすぎだよ。それに私ももう86歳。歳をとり過ぎたよ。」


「お言葉ですが、歳は関係ありません。お気になさっているのなら、私には若返りの技術もあります。どうか、一緒に来てください。私は貴方と共に、研究や仕事をしてみたいのです。」

 京子は、こんなになりふり構わず必死なサン・ジェルマンを、初めて見た。


 サン・ジェルマンの熱烈な説得が功を奏したのか、それとも天才特有の気まぐれか。ついにニコラ・テスラは重い腰を上げた。


「よかろう。そこまでキミが言うのなら、ついて行ってやろう。地獄でもどこでもいいから、ここではないどこかへ連れて行ってくれたまえ。」


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ