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「奥様は雪女」(セーラー服と雪女 第11巻)  作者: サナダムシオ


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3/9

③ テスラとの密約

「サン・ジェルマン君、こちらの方は?」

 テスラが彼女を指し示す。

「申し遅れました。はじめまして。私は村田京子です。一応、こちらのサン・ジェルマンのパートナーです。」

 京子は慌てて自己紹介をした。


「これはこれは、異国のお方、日本人かな?私はニコラ・テスラです。以後、お見知り置きを。」

「存じております。貴方は科学の歴史上、重要人物ですから。」

「おやおや、キミまでそんな事を言うのかい?さては、キミも未来から来たのだね?」


 京子はうっかり口を滑らせたが、彼は既に、サン・ジェルマンからネタバレを食らっていたらしい。

 大丈夫なの?という目でサン・ジェルマンを見たが、彼はただニコニコ笑っているばかりである。


 そんな彼がテスラに話しかける。

「貴方はこれまで、数々の画期的な発明をされてきました。交流電力システム、無線通信技術、そしてテスラコイル⋯。」 

「⋯そう、それこそが私の集大成。」


「貴方は、やはり、やるつもりなのですね。」

「やって見せるとも。電磁波を利用した、無線の全地球送電システム、通称世界システムを!」


「そんな事が実現した日には、有線の送電線が売れなくなるから、またエジソンとその取り巻き達から、横槍が入りそうですねえ。」


「アイツとは、どうにもウマが合わない。直流と交流の論争以来、ずっとそうだ。まあ、もとはと言えば、アイツが雇い主で、私が従業員という立場から、関係がスタートしているから無理も無いが⋯。」


「資金的には、大丈夫なんですか?」

「もちろん。最近、海軍の連中がやって来て、今後の協力次第では、カネをいくらでも出すと⋯。」

「貴方の技術を軍事転用する、レインボープロジェクトですね?」


「⋯キミは何でもお見通しなんだな?」

「なにしろ私どもにとっては、全てが過去の歴史ですので⋯。」

 そう言ってサン・ジェルマンはニッコリ笑った。

 いや、盛大にネタバレしてるじゃん、と京子はドキドキした。


「大丈夫、この方は我々の事を、高電圧の電磁波が見せる幻影だと思っていますから⋯。ねえ、そうでしょう、テスラさん?」

「ははは。そういうことにしておこうかな。」


 この二人、どこまで本気でどこからが冗談か、判別がつかない。まるでキツネとタヌキだ。と、京子は思った。


「貴方は物理的な肉体を持ちながら、アカシックレコードに手が届く、稀有な存在だ。」

「ああ、それもバレているのかい。」

「そうで無くては、そう次々にアイデアが湧いてきませんからね⋯。」


「実は、我々が使っている時を旅する技術も、貴方が提唱した理論に基づいて、開発されたものなのです。」

「ほう、それは誇らしいことだ。」


「有機物と無機物を同時に無事に移動させるために、少しばかり工夫が必要でしたがね。」

「うん、うん、そこが今の悩みどころだ。少しアイデアを出して見せると、すぐに皆が食いついてくる。未熟な技術の性急な利用は、とても危険なのにね?」


「レインボープロジェクトは、やはり続けるのですね?」

「資金のためだ。致し方無い。」

「貴方に命の危険があれば、助けに参りますが?」

「そうだな。本当にそんな事があるなら⋯頼むかもしれないな。」


 こんなに公然と、過去をイジる約束をしていいのだろうか?と、二人の話を横で聞いている京子は、ハラハラしたのだった。



挿絵(By みてみん)

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