① 結婚式の提案
雪女の末裔と、時をかけるイケオジのカップルの、その後を描く物語です(>ω<)
彼女の名は村田京子。
雪女の末裔でかつ、不老不死の身体である。
それ故、見た目は永遠の23歳。
彼女のパートナーの名は、かの有名な「時をかけるイケオジ」、サン・ジェルマン。
彼の見た目は永遠の36歳。
何を隠そう、かつて人魚の肉を食べてしまったのである。
そして同じやり方で、彼女を不老不死にした張本人なのである。
二人はひょんなことから結婚する運びとなった。
だが前述の通りの事情もあり、結婚式や披露宴に、友人や親戚を呼ぶわけにもいかない。
「ねえ、いくら事情婚でも、結婚式は挙げておきたいわ。」
ある日、彼女は彼に言った。
「それもそうだね。じゃあ、こういうのはどうだろう?」
彼から一つの提案が出された。
「素敵ね。ぜひそうしましょう!」
彼女は彼の提案に飛びついた。
サン・ジェルマンの提案は、いつだって面白い。
彼女はすっかり彼の虜だ。
二人は荷物をまとめると、自家用車兼タイムマシンのシルバーのビートルに乗り込んだ。
彼がセンターコンソールパネルに、目的地の時空の座標を入力すると、すぐに出発した。
現場には、あっと言う間に到着した。
そこはフロリダのディズニーリゾート。
その一角に立つ教会前だった。
京子はクルマから出ると、荷物を抱えて、いそいそと着替えに行く。
サン・ジェルマンは、出かける前に既にタキシードに着替えていた。
彼はいつだって用意周到なのである。
戻って来た京子は純白のウェディングドレスを身にまとっていた。
「キレイだよ。京子さん。」
「バカ。」
京子はすっかり照れてしまって、つい間違った返答をしてしまう。
「さあ、行きましょう。」
そう言う彼にエスコートされて、教会の中に入ると、現地のガイドが手配した牧師と、オスとメスのネズミの着ぐるみが2体待っていた。
それは皆さんご存知の、ミッキー&ミニーだった。
「誰も呼べないからこその、この形。神前結婚式になぞらえるならば、これはネズミ前結婚式ですかな?」
彼がお茶目な顔をして言う。
「素敵ね。気に入ったわ。」
そう言う彼女も満面の笑顔だ。
十字架と牧師とネズミの前で誓いを立て、こうして二人は正式に夫婦となったのである。
これから何が起ころうとも、二人の前途は洋々だ。
なにせ二人は不老不死なのだから。
それにイザとなれば彼は炎を操り、彼女は雪と氷を操る。
だから寒くても、暑くても無敵なのである。
「さて、これからどこへ行こうかしら。」と、彼女。
「どこへでも。時間は無限にあるからね。」と、彼。
二人の旅は、ようやく始まったばかりだった。




