影の契約――太陽は堕ち、月は昇る ~命の半分を捧げた女の末路~
陽の男、彼は能力が低いけれど、明るい性格で好まれていた。
陰の男、彼は能力が高いけれど、暗い性格で人をあまり寄せ付けない。
とある女が、陽の男に――陰の男の能力を託したくて、影の秘術を行った。
その結果、男同士の能力が入れ替わった。
女の残り寿命を半分削る、秘術を使ってまで……恋情とは、かくも恐ろしい。
陽の男は能力も性格も優れる、そんな存在となるはずだった。
しかし、陽の男は、能力が高まった事で傲慢な男に成り下がった。
陰の男は能力も性格もパッとしない、そんな存在となるはずだった。
しかし、陰の男は、突如失われた能力を補うように努力を重ねた。
努力する陰の男には、同情も多分にあっただろう。
しかし陰の男も、元々人嫌いという訳ではなかった。
陰の男の人気はこれでもかと高まり、陽の男からは人が離れていった。
陰の男の隣には、彼の幼なじみの女が並んで立っていた。
やがて、陽の男は太陽の男、陰の男は月の男と呼ばれ方が変わっていき……
穏やかでありながら、人を照らす月の信奉が流行していった。
秘術を使った女は、絶望した。
残り寿命の半分を使った結果がこれかと――しかし陽の男の傲慢は止まらない。
しかし、突如努力も無しに能力が飛躍的に伸びた、陽の男も立派な被害者ではなかろうか?




