第2話 AIの神と呼ばれて ~農耕、発電、教育を一週間で~
――それは、たったひと粒のトウモロコシから始まった。
「この土地じゃ、作物は育たねえんだよ」
「星が怒ってる。昔、祟りがあって……」
村の老人たちは、そう言って諦めていた。
だが、カイルは違った。ポッド内のサンプルケースを手に、言い放つ。
「そんなもん、水と光と栄養とAIがあれば、どうとでもなる」
彼は地表を走る“ローバードローン”に命じた。
地質を分析し、水脈を探り、人工肥料を合成し、土地を整える。
やがて、一筋の若緑が芽吹く。
「……育ってる、奇跡だ」
「いや、これは科学だ。祈るより耕せ。俺がやり方を教える」
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次に取りかかったのは、発電。
壊れた旧帝国の観測基地から“地熱ユニット”を回収。
そこに、カイルが搭載していた“マイクロAI群”が接続される。
ドゴォ……と、大地が軽く震え、やがて灯りがともる。
「この明かり……昼みたいだ!」
「これが、“太陽を持ち帰る”ってやつさ」
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そして、教育。
ノヴァが設計した“簡易型学習キューブ”は、触れるだけで
文字・数・歴史・論理思考を視覚と音声で教えてくれる。
「わ、わたし……名前が、書けた……」
「それが第一歩だ。“未来”ってのは、書くことで始まるからな」
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一週間で、村は変わった。
畑が生まれ、電灯がともり、子どもたちは数字を数え始めた。
やがて、村人たちは彼を“技術の神”と呼び始める。
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「俺は神じゃない。ただの整備士だ」
「違う。“神は直す者”という意味もあるのです」
と、リュカはまっすぐに言った。
「……そのうち、俺のことを恐れる奴も出てくるさ」
そして、カイルは空を見上げた。
遠い軌道上、何かが動いた気がした。
帝国の目が、こちらを見つけ始めている——。