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10.国民の声

 第一回の老害審判を受けて、世の中の声は真っ二つに割れていた。


 老害が排除されるのは良い事だとする人間がいる一方、人命軽視で倫理的に許されないとする人間も多数いた。


 この国民の議論にマスコミが黙っているわけはない。


 連日ワイドショーでは老害審判についての議論がされ、コメンテーターの言う事も割れていた。


「こんな審判は間違っている。ご高齢の方たちの人権軽視だ」

「基本的人権が守られていないだろう。憲法違反だ」

「老害の問題は今や社会問題です。この法律は今の時代に即した臨機応変なものであると言えます」

「私はこの件についてはノーコメントで行きたいですが……そうですね、強いて言うならば自分が告発されるのが滅茶苦茶怖いっていう事ですかね」


 各放送局の色もコメンテーターの発言には影響していたが、何より彼らが恐れていたのは迂闊な発言をして自分が老害審判に告発される事だった。


 なので、六十五歳以上のコメンテーターはその職を辞する事が多くなっていた。メディアに出てくるのは若いコメンテーターばかりで、多くのコメンテーターは今まで自分が老人達から受けて来た理不尽なパワハラの経験を話すに留めていた。


 中には倫理的問題を指摘するコメンテーターもいたが、老害審判を支持する過激な層からの執拗なネットでの中傷などを受け、大抵のものは病んで一時休業に追い込まれて行った。


 そうすると、次第にワイドショーがこの問題を扱わなくなって来た。この国では、日々センセーショナルな事件が起きたり、芸能人のゴシップが湧いて出てきたりするものだ。マスコミは、より報道しやすいネタの方に重きを置くようになっていった。


 中には地道に老害対策法について議論する番組もあったが、それは関東放送の深夜番組だけだった。その深夜番組で老害対策法に対して辛辣な意見を述べ続けていたのが、コメンテーターで社会学者かつタレントの五居剣伴(ごいけんばん)だった。


「私はね、この法律には大反対なんですよ。そもそもね、一部の高齢者を老害だって言って煙たがる風潮があれなんですよ。私は今五十五歳ですけどね。もう若い子たちからは老害だって煙たがられているわけなんですよ。こちらは大学で講義しているだけなのに、『テストウザい。老害の出す問題わけ分かんない』と来たもんですよ。お前ら大学に何しに来てんだ! っちゅーね。でもね、こういう私の態度そのものが老害だって言われるんですよ。世の中老害老害ってうるさいんですよ!」


 五居剣の痛快なコメントは、毎回視聴者に大うけだった。番組は深夜帯に放送されていたのにも関わらず、高い視聴率を誇っていた。それだけ世間が老害対策法に対して関心があるという事の証拠だろう。


 ネット上でも、五居剣のコメントは毎回大きく取り上げられてバズっていた。動画配信サイトでも、五居剣のコメントをまとめた動画が再生回数を伸ばした。だが、新聞や週刊誌、他局のテレビ番組は沈黙を守り通していた。

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