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プロローグ:老害対策法施行

 Question【あなたは老害を死刑に出来るとしたらそれに賛同しますか?】


 ある若者はこう答える。


「えー。老害を殺せるのー? 職場のおっさんウザいし賛成かな?」


 ある主婦はこう答える。


「老害って私の周りにはあんまりいないですけど、老害によって苦しんでいる人がいるのならば賛成してしまうかもしれないです。でも、死刑っていうのは行き過ぎているような気がしなくもないです」


 ある会社員男性はこう答える。


「老害って呼ばれているくらいなんだから害なんでしょう。それなら賛成ですね」 


***


【特別法:老害対策法 六十五歳以上の高齢者が、市民により『老害』だと告発され、ネット投票で『認定』が過半数の場合、その場で銃殺とする】


 ────首相官邸


「総理、いくらなんでも、この法律は倫理的にいかがなものかと……」

「黙れ、佐宗(さそう)。貴様厚労大臣のくせに私に歯向かうつもりか?」

「いえ、そんな滅相もございません。ただ、市民の批判の声が……」

「そんな声はどうせ老害どもの声だろう。だから私は奴らを一掃しようとしているのだ。分かるか? 今こそ、無用な老害どもを駆逐し、健全で若々しい日本国を作り上げるのだ」


 ────20XX年日本


 地球温暖化が進み、働き手となる体力に満ちた若者が必要とされている日本。その日本において、職場でのパワーハラスメント、いじめ、派閥の抗争など、様々な問題が指摘されていた。ハラスメントは若者の働く意欲を削ぎ、離職率を高め、転職をも足踏みさせる要因として広く周知されていた。そして、それらを先頭に立って行っているのは、主に職場のベテランである高齢者だという有識者の指摘があった。


 また、高齢化による健康保険の財政の圧迫は顕著で、それでなくても巨額の負債にあえいでいる日本において、それは財政ひっ迫の最大要因とされていた。


 そこで、時の総理大臣の大豆生田(おおまみゅうだ)賢治(けんじ)は、老人、特に害をなす老人である『老害』を駆逐する法案を与党の賛成多数で採決し、即日で『老害対策法』を施行した。


 中には反対する議員もいたが、大豆生田は聞く耳を持たず、裏から手を回し是非を捻じ曲げて行った。


 大豆生田に買収された大勢の議員は、大豆生田に消される事を恐れその口を閉ざし、反対に回って大々的にネガティブキャンペーンを行い秘密裏に消されて行った人間を見て、恐怖に打ち震えていた。


 厚生労働大臣である佐宗励介(さそうれいすけ)はこの法律に反対をし、何度も大豆生田と直談判をしていたが、それでも消されずに、さらには厚生労働大臣としての地位を維持していた。


 その理由は、佐宗が国民から圧倒的な人気を誇る厚生労働大臣だったからだ。佐宗はそのスマートな見た目と理知的な物腰で、党内で最も国民人気のある花形議員だった。「佐宗様がいるから民慧党(みんけいとう)に票を入れるのよ」という女性たちの声、「佐宗さんは信頼できる男の中の男だ」という男性たちの声、「佐宗さんはマイノリティーの事も凄く良く考えて政策を打ち出してくれる」というLGBTQの声。全ての国民における票を稼ぐ一翼として、佐宗を厚生労働大臣から降ろすわけにはいかなかったのだ。佐宗を罷免する事、それは、民慧党が総選挙で負ける可能性を大にするものとして認識されていた。


 そんな中で、大豆生田は自身による肝いりの政策である老害対策法を強引に推し進めた。国民の反応は是非が分かれていたが、連日マスコミで報道される老害たちの愚行、老害たちによる弊害によって、世論はこの政策に前のめりになっていた。


 そして、この法律は制定され、即日施行という運びになったのである。

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