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過去からの挑戦状

短篇投稿再編集版

「私はため息をついた。なぜなら...。」

 見間違う筈も無い其処に居たのは若かりしの時の俺なのか?、背格好もオリジナルカラーのメットも、だが俺ってこんなだったっけ?、確かにムラッ気は在ったが、自分からつっかっかたりはしなかった筈だ、若しかしてアイツかオリジナルなのに同じ色に塗った()()()()()()()()()持ってた奴が居たよな?。


「其処のおっちゃん良いのに乗ってんじゃん、後ろから見てたが速いよな?、同業かい?」

 125㏄並のスリムで軽量な車体に250㏄並のパワー、都心の渋滞の中でベストな車両かと思って居た、俺も所有したが何故か直ぐに手放した、でも何故手放したのかは未だに思い出せない。


「兄ちゃんも良い選択してんじゃ無いか、中々選ばんぞ其の商売でSDR何てヨ!」

「おっちゃんも渋い弄りかたしてるよな、中々居ないよそんな弄りかたするの、一見ドノーマルに見えっけど此奴より引っ張れるって普通はクロスしてるミッションじゃ無理だよな?」

「嫌、エンジンもミッションもノーマルだ、気の所為だろ?」

 ヤッパリ別人か?、目上の人にこんな口の聞き方しなかったよな俺?、然も同業の先輩かもしれんのに少しお灸据えてやるか…、こんな生意気な奴には良い薬だ。


 信号が変わり一気に引っ張り前方の渋滞最後部に飛び込む、長年連れ添った相棒で然も路面の状態まで身に沁み込んだ内堀だ、皇居前のストレートエンド先ず右折、スロットルを開けリアが流れ始めるが構わず開ける、フロントも荷重が抜け浮き上がり流れるリアのみでクリアーする、速度調節のみのブレーキングで警視庁前の左コーナーに飛び込む、フロントリア共にスライドを始め僅かな当て舵だけ当て、リアのスライド量をスロットルで調整しコーナー出口にフロントを向け続ける、付いてこないかやはり別人だな…。


 もし俺なら付いて来れる筈だ、アレに乗って居た頃には此れはマスターして居たから…。


 目的地の外務省に到着、地方版の締め迄残り時間は僅か飛び降りる様に駆け出しパスを見せ記者クラブへ急ぐ、BOXに入った記事とフィルムを引っ手繰る様に手にしてもと来た道を引き返す、表に出て相棒を置いた場所へ駆けて行く、其処にはさっき見たSDR奴も目的地は同じだったのか。


 タンクバックの時計を確認、充分な残り時間だ、外務省を後にする。


 内堀の手前、警視庁前で信号待ち…。


 さっき聞いた覚えの在る音がする、メンドクサイのが来やがったよ…。


「すっごく速いんですね、全然追い付けませんでした!」

「嗚呼、そうか…」

「何処に務めてるんですか?、今迄お見かけした事有りません!」

「そうか、知りたいなら付いて来な、最も追い付けたらの話だがな?」


 今度は敬語かよ、解りやすい奴だなでも何処の社だ俺も見た事無かったぞ?、俺も長い事この商売続けているが今未だ見た事無かったな、メインの車両じゃ無いから社旗棒付けて無いし、奴もそう見えて社旗棒無かったな、付けてれば巻き取って在っても社旗の色で解ったんだがな…。


「オイオイ嘘だろ?、一度見せただけで覚えやがったのか?」

 ミラーにカウンターを当ててはいるが、内堀の左折でドリフトしてやがるキチガイかアイツ!。


 シグナルは青、対向無し、内堀から右折社の方へ向かう、付いて来やがるが大丈夫かアイツ?、締めの時間に間に合わんぞ、早く社に帰れよ時間内に届けるのが俺らの任務だろうが!。


 それでも音は付いて来る、社に沿い左折しそして駐機場の有る路地へ又左折、未だ付いて来やがる?、そうかアイツ隣に在籍してるのかよ、隣とは仲悪いから今迄知らなかったんだなアイツが居るのを…。


 駐機場に入る為左へ曲がるが音は付いて来る、オイオイ他所の社に付いて来る奴が在るか?、サッサと帰れよ間に合わんぞ…。


 でも傍まで聞こえた2STの音は突然消えた、馬鹿が転倒(ころび)やがったのか!、本当に間に合わんぞ?、すぐさま駆けだしたが其処には影も形も無かった…。


「何処に行きやがったんだアイツ…。」

 嫌そんな場合じゃ無い、俺が遅れて仕舞う一気に階段を駆け上がって居た。

「こんな寒く成った冬なのに怪談かよ…、今年ももう終わるのに真冬の怪談か冗談じゃない…、残り一週間で此の平成6年が終わるのに…。」




「アレ?、あの人なんで本社(うち)に入って行くんだ?、他所の社の人だろ?、うちの社に友達でも居るのかな?、先輩達の友人ならあの速さも頷けるよな…」

 駐機場に入ったが其の人は居なかった、影も形も何処にも無かった…。


「嘘だろ夏じゃ無いんだぞ、真冬に怪談かよ?、本当に何処行ったんだあの人?」

 でも速かったよなあの人もあのDTも、先輩のDTも早いもんな追い付けないし、あの人にも全く追い付けなかった、内堀のコーナーは恐かったもんな車体が捻じれて暴れるし、決めた俺も探してあの型のDTにしよう、そしてもっと速く成りたいから…。

 そう誓った〈昭和65年〉の年末の日、夢でも見て居た様だった…。



「アイツ、デスクに怒られて無けりゃ良いけどな、何か憎めなかったな、なあDT!」


「此の商売を始めてもう10年が経つ、そんな或る日の事DTのタンクに触れて...私は声をかけた。」

見る事の出来なかった昭和65年

今に繋がらぬ別世界の平成六年

何方かでも行って見たかった…

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