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その夜



 カインの力のおかげで、討伐隊はなんとか劣勢を脱することができた。魔物たちは次々と討伐され、その勢いは次第に衰えていった。そして、ついに最後の魔物が討ち取られると、戦場には静寂が戻った。



 討伐隊のメンバーたちは、疲れ果てながらも安堵の表情を浮かべた。しかし、その目には複雑な感情が宿っていた。彼らはカインの強大な力を目の当たりにし、尊敬と恐れが入り混じる感情を抱いていた。



「これが……覚醒者の力か……」



 一人の隊員が呟いた。その言葉には、羨望と恐怖が混ざり合っていた。



 リリスはそんな隊員たちの様子を見ながら、カインに近づいた。



「カイン、あなたの力は本当に圧倒的ね……おかげで助かったわ」



 彼女の言葉には、どこか寂しげな響きがあった。カインはその言葉にただ無言で頷き、光の剣を虚空に散らした。



「次の拠点に向かおう。休息はその後だ」



 彼は冷静にそう言い放ち、次の行動に移るために歩き出した。討伐隊は彼の後に続きながらも、尊敬する者、恐れる者、と彼の背中に対する感情は一様ではなかった。



 カインが静かに歩き出すと、討伐隊は彼の後に続いた。しかし、その行進の中で空気は微妙に張り詰めていた。先ほどの戦闘で、カインが覚醒者としての強大な力を発揮したことで、隊員たちの中に一層の恐怖と不安が広がっていたのだ。



 リリスは、そんな空気を感じ取っていた。彼女はカインに対して信頼を寄せているが、他の隊員たちが同じように感じていないことを理解していた。覚醒者の紋様を持つ彼が異端視され、距離を置かれる理由が明白になった瞬間でもあった。



「このままじゃ、いつか不満が爆発するわね……」



 リリスは内心でため息をつきながら、周囲を観察していた。隊員たちは口には出さないが、その表情や仕草から不安の影が見え隠れしている。表立って批判を口にする者はいないものの、明らかに彼らの心はカインから離れつつあった。



 やがて、討伐隊は簡易拠点に到着した。簡単な防壁を築き、休息の準備を始める。魔物討伐という使命を果たした後の安堵の中にも、緊張がまだ残っていた。



「皆、今日の戦闘でよく耐えた。今夜は十分に休息を取れ」



 カインは落ち着いた声で隊員たちに告げたが、返事は小さく、反応もどこかぎこちない。彼の声が響き渡る中、誰も視線を合わせることなく、各自の仕事に戻った。



「カイン、少し話せる?」



 リリスが近づき、彼に静かに呼びかけた。カインは無言でうなずき、彼女とともに拠点の外れに向かった。二人きりになったところで、リリスはカインを見つめながら、心の内を語り始めた。



「隊のみんな、あなたの力を目の当たりにして、少し戸惑っているみたい。誰もはっきりとは言わないけれど、あなたが覚醒者としての力をまだ持っていることに恐怖を感じてる」



 カインはリリスの言葉を静かに聞きながら、拳を握りしめた。自分が覚醒者としての力を持ち続けることが周囲を不安にさせていることは、彼自身も薄々感じていた。それでも、リリスの口から聞かされると、それが現実であることが一層痛感される。




「でも、あなたの力がなければ今日の戦いは負けていた。皆もそれは理解していると思うわ。少しずつカインのことを知れば、いずれ信頼してくれるようになるわ」



 リリスが穏やかな声で言ったその言葉には重みがあった。彼女自身も覚醒者としての力を失った今、カインとは違う立場にある。だからこそ、彼の苦しみを理解しながらも、彼を支えることができる存在でもあった。



「ありがとう、リリス。お前がいてくれるおかげで、少し救われたよ」



 カインはリリスに感謝の言葉を告げたが、その目はどこか遠くを見ていた。彼はこのまま征魔賊伐将軍として、異端視されながらも戦い続ける運命にあるのだろうか。そんな疑問が、彼の胸の中に渦巻いていた。



「それでも、俺は俺にできることを果たそう」



 カインは決意を固め、視線を前に戻した。彼が背負う力と宿命は避けられないものだった。しかし、それでも彼は、自分の信じる正義と使命のために戦い続けることを選んだのだ。



 その夜、拠点は静寂に包まれていた。隊員たちはそれぞれの思いを胸に、休息を取っていたが、どこか張り詰めた空気は消えていなかった。カインの強大な力を目の当たりにしたことで、彼らの心に生まれた感情は一様ではない。ある者は尊敬を抱き、ある者は恐れを抱き、そしてその間に揺れる者もいた。



 その中で、一人の若い女性がカインを見つめていた。彼女は討伐隊に加わっている新人で、まだその剣の腕は未熟だが、彼女の中には強い意思が宿っていた。



 彼女の名はアリシア。彼女はカインの圧倒的な力にただ畏怖するだけではなく、その力に対して強い興味と憧れを抱いていた。



「いつか、私もあんな風に……」



 アリシアはカインの戦う姿を思い出しながら、強くなりたいという志を胸に抱いていた。そのために、この遠征でカインからできる限りのことを学ぼうと決意していた。




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