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騎士の問い

 


 詰め所に着くと、レイナはカインを無言で一室に案内し、扉を閉めた。狭い部屋には、窓から差し込む月光がわずかに照らしているだけだった。レイナはカインの前に立ち、その鋭い目で彼を見つめた。



「それで…?どういうことか説明しろ」



 カインは少し迷いながらも、袖を捲り上げ未だ消えない覚醒者の紋様を彼女に見せた。あれだけ騒ぎになった以上嘘をつくことは無意味だと感じたからだ。それにカインは彼女のことは信頼したいと思っていた。



「…魔王を倒した後も、俺の力は消えなかった。他の覚醒者は皆力を失ったのに、俺だけが…」



 言葉を紡ぐ度に、カインは自分が異質な存在であることを痛感していた。レイナはその言葉を静かに聞きながら、目を細めた。



「他の覚醒者が力を失った今、君だけがその力を持ち続けている、それが何を意味するか…。大きすぎる力を持つ者には、必ずと言っていいほど、甘い汁を吸おうとする者や、逆にその力を邪魔に思う者が現れる。お前もその標的になるだろう」



「…分かっているつもりだ。でも、どうしようもないんだ。俺が望んで力が残ったわけじゃない」



 カインは拳を握り締めながら答えた。レイナはしばらく黙って彼を見つめていたが、やがて軽く息をついた。



「私も、今回の魔王との戦いでの手腕が評価されて軍務卿という役職を任されることになったが……正直、これは私を役職に縛りつけ、身動きを取りにくくさせる思惑もあるだろう。権力者たちは、強すぎる者や目障りな者を制御しようとする。それが人の本性だ」



 魔王討伐の論功勲章で彼女が大々的に軍務卿に任命された時のことを思い出す。カインは今も代わりの騎士団長への引き継ぎの真っ最中だろうに、自分に時間を割いてくれることに改めて感謝していた。



 また、覚醒者達にもかなり褒賞は出たが、金品などが中心であった。力を失う者たちに対して役職や地位が割り振られることは無かったのだ。逆に言えばカインが力を失っていないことが広まればレイナのようにカインを縛りつけるための立場を押し付けられるのだろうか?



 お互いが思案するように黙り込み少しの間静寂が続いた。やがて、レイナは深い息を吐きながら、カインに向かって歩み寄り、静かに口を開く。



「カイン、その力は強大すぎる。危険と言ってもいいほどに」



 レイナの言葉には、感情を抑えた冷静さがあったが、その中には確かな警告が込められていた。



「だからこそ、君がどうするかが重要だ。お前がその力をどう使うか……」



 カインは静かに頷いた。レイナの強さ、そして彼女が持つ冷徹さと正義感はよく知っている。カインは自らの立場に向き合い、それを言葉にする必要があった。



「俺は、この力で守れるものがあるなら、戦い続ける。」



 レイナはその言葉を聞き、しばしの沈黙の後、軽く頷いた。



「責任感の強い君らしい答えだ。ならば、君がその力を正しい方向に使うため、私も協力しよう。」



 レイナは少し微笑んで、続けて言った。



「魔王の軍勢の残党がまだまだ残っている。君にはその討伐隊の隊長を任せたい。いつまでも王都に残っていると何に巻き込まれられかわからんからな」



 その提案は、カインに新たな決意を植え付ける。彼はこの先、自分の力とどう向き合い、どう活用していくのかを問い続けることになるのだろう。



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