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葛藤

 


 カインは討伐隊の一団を率いて王都へ向かっていた。足元を駆ける地面の感触、周囲を警戒しながら進む隊員たちの姿…すべてが現実だという感覚はあったが、彼の心はどこか別の場所に囚われていた。



 古代の神々の言葉が、脳裏に何度も蘇る。



「進化には破壊が伴う…我々と共に新たな時代を築こう…」



 彼らの声は、一度聞いたときよりもさらに強く、そして心に深く浸透してくるようだった。カインは、これまで戦い続けてきた覚醒者としての自分の役割と、古代の神々が語った「自由」という概念の間で揺れていた。



「カイン様、大丈夫ですか?」



 アリシアの声が、カインを現実に引き戻す。



「…ああ、問題ない」



 カインは軽く頷き、前方に目をやった。王都の姿が遠くに見え始めていたが、空には黒い煙が立ち込めている。異形が王都を襲い、既に混乱が広がっていることは明白だった。



「急ぐぞ!」



 カインは命じ、討伐隊の隊員たちに声を掛ける。しかし、頭の中では別の考えが再び浮かび上がってきた。



「現代の神々は、お前を利用しているにすぎない…いずれ切り捨てられるだろう…」



 彼は、これまで自分が信じてきたものが揺らいでいることに気づいていた。現代の神々から授かった覚醒者としての力、その力を用いて魔王を討伐し、この世界を守ってきた自負がある。しかし、もし古代の神々の言葉が真実であり、自分がただの道具として利用されているのだとしたら…?



「どうすればいいんだ…」



 心の中でそう呟いた瞬間、カインの足が一瞬止まりかけた。だが、すぐに自分を奮い立たせ、再び前進する。今は自分の内なる葛藤に囚われている場合ではない。王都は危機に瀕している。今の最優先は、目の前の人々を守ることだ。



 討伐隊の隊員たちも、カインの指揮に従い、必死に進軍を続けていた。カインの背中に紋様が広がっていることに気づいている者もいたが、その異変を恐れるよりも、彼が持つ強大な力に頼らざるを得ない現状だった。



 王都が近づくにつれ、地面には倒れた人々や破壊された建物が次々と目に入ってくる。異形の怪物たちは無差別に襲い掛かり、町全体を混沌に陥れていた。



「これが…古代の神々の望む世界なのか?」



 カインは呟いた。破壊と混沌が支配する光景は、まさに古代の神々の言葉通りだった。しかし、それは人々の悲鳴や恐怖の中にある未来であり、カインが守ろうとしてきた世界ではなかった。



 その瞬間、頭の中で再び古代の神々の声が響いた。



「これは過程にすぎない。進化には犠牲が必要だ。だが、我々と共に歩むならば、真の自由が得られる」



 カインは拳を握りしめた。古代の神々の言葉は魅力的であり、そして恐ろしい。彼は心の中で、決断を迫られているような感覚に囚われた。だが、今すぐに答えを出すことはできない。現実に戻り、目の前の問題を解決しなければならない。



「行くぞ!」カインは力強く叫び、討伐隊をさらに前へと導いた。



 王都の門が近づく中、カインの心の中では、現代の神々と古代の神々の間で揺れる葛藤が続いていた。自分が守るべきものは何なのか、そしてどの道を選ぶべきなのか。その答えはまだ見つからないまま、戦いの運命が迫っていた。



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