夢見
その夜、カインは深い眠りの中で奇妙な感覚に襲われていた。まるで自分の意識が別の場所へと引きずり込まれるような、霧の中を漂うような感覚だ。目を開けても、そこには見慣れた光景はなく、暗闇の中で何かがうごめいている。
「カイン…我々の声が聞こえるか?」
突然、低く重々しい声がカインの脳内に響いた。目の前には形のはっきりしない、しかし威圧的な存在感を持つ影のようなものが現れていた。その影は無数に分かれ、カインの周りを取り囲む。
「お前は誰だ…?」
カインは驚き、反射的に覚醒者としての力を引き出そうとするが、その力さえも封じられたように感じた。
「我々は古代の神々だ。かつてこの世界を創り、そして支配していた存在…だが、今は現代の神々によって封じられ、長い眠りについている」
カインの胸は緊張感でいっぱいになった。古代の神々、アイシスが話していた破壊と混沌を象徴する存在。彼らが今、直接彼に語りかけているのだ。だが、何故?
「何の目的で俺に語りかけているんだ?お前たちが封じられたのは、この世界を混乱に陥れたからだろう」
カインは冷静を装って質問を投げかけた。
「封じられたのは、確かに我々が力を使いすぎたからだ。しかし、今のこの世界を見てみろ。秩序ばかりが重んじられ、進化は停滞している。変化を恐れる現代の神々によって、生命は窮屈な枠に押し込められているのだ。我々の復活は、その停滞した世界に新たな進化と自由をもたらす」
「自由だと?お前たちの望むのは破壊と混沌だろう!」
カインは反論するが、古代の神々の声はそれに応じてさらに強く響く。
「破壊は進化の始まりにすぎない。我々はただ無意味に世界を壊すのではない。世界を再び動かすためには、変革が必要なのだ。人々が限界を超え、次なる段階へと進むためには、現代の神々による束縛から解放されねばならない。そのために、お前の力が必要なのだ、カイン」
「俺の力…?」
カインは困惑し、問い返した。
「そうだ。お前は覚醒者として現代の神々の力を得たが、その力の源は古代の神々である我々からも影響を受けている。お前が感じている紋様の拡大や力の進化は、その証だ。我々と共にこの世界を解放し、新たな時代を築こうではないか」
古代の神々の言葉は魅力的でありながらも、どこか恐ろしさを伴っていた。確かにカインは自分の力が以前よりも強くなっていることを実感していたが、その代償として紋様が広がり、体に異変をきたしているのも事実だ。古代の神々の力を受け入れることが、本当に正しい選択なのか?
「俺に協力しろというのか?だが、俺は今まで現代の神々の力で魔王を討伐し、この世界を守ってきた。お前たちと手を組むなんて…」
「現代の神々はお前を利用しているにすぎない。彼らはお前を道具としか見ていない。いずれお前が彼らにとって脅威となれば、容赦なく切り捨てるだろう。我々はお前を救いたいのだ、カイン。お前に真の自由と力を与えるために」
カインはその言葉に揺さぶられた。確かに現代の神々が自分を利用しているという可能性は考えたことがある。だが、それでもなお、この世界を守るために戦うことが彼の使命だと信じてきた。
「俺は…どうすればいい?」
カインは呟いた。
「考える時間はまだある。我々の声はこれからもお前のもとに届くだろう。その時が来れば、お前の答えを聞かせてくれ」
古代の神々の声が次第に遠のき、カインは再び意識を取り戻しつつあった。目を覚ましたカインは、まだその言葉が頭の中にこだましていることに気づいた。
果たして、自分が進むべき道はどこにあるのか?古代の神々の囁きが、彼の心をさらに揺るがしていく。




