力の代償
カインが目覚めて間もなく、アイシスは彼の身体に刻まれた紋様が気になり、調査を始めた。覚醒者としての能力が拡大しつつあることは明らかで、その進行具合を詳しく知る必要があると感じたのだ。彼女は冷静な眼差しでカインの体を観察しながら、いくつかの魔法的な測定具や古代の文献を広げ、調べを進めていく。
「これは…やはり普通の覚醒者とは違う」
アイシスは、呟いた。彼女の声に、カインもリリスも耳を傾ける。
「どういうことだ?」
カインが尋ねると、アイシスは魔法の光でカインの紋様を照らしながら説明を始めた。
「通常、覚醒者の紋様はその力の源として機能するものだけど、カインのはそれだけじゃない。紋様が拡がるにつれて、君の能力が増幅されている。でも、その代償が大きい…」
「代償?」
カインが眉をひそめる。
アイシスは手元の資料を一瞥し、思案するように口を開いた。
「古代の文献によれば、現代の神々が覚醒者に与えた力は、神々の血と共に分け与えられたという。力を増すたびに、その一部が紋様となって現れ、やがてその者の肉体や精神が神に近づくとされている。そしてその負荷に耐えきれずに肉体が崩壊したり正気を失ってしまう、と。カイン、君の力は今、普通の覚醒者を超え、その文献に記された者たちのようになりつつある」
リリスも心配そうに耳を傾けていた。
「それって、カインがもっと力を使うたびに、その負担が増えるってこと?」
アイシスは無言で頷いた。彼女の表情は冷静だが、その裏に潜む複雑な感情が垣間見えた。
「そうだ。そして、さらに重要なのは…君の力が、現代の神々だけでなく、古代の神々にも関係している可能性があるということだ」
「古代の神々?」
カインは驚きつつも、自分の力に関する疑念が深まった。
「今のところ、確かなことは言えないが、古代の神々の声が聞こえたことと君になぜか覚醒者としての力が残っているという現象には繋がりがあるかもしれない」
アイシスは資料を閉じ、カインに向き直った。
「それに、君がこのまま力を使い続けると、その力がどこまで進行するのか予測できない。私が前までの限界を越えられるなどと余計なことを言ってしまったばかりに……すまない」
カインはしばらく黙り込んだ後、静かに頷いた。
「いやありがとう、アイシス。君の言うことを理解した。だが、この力が必要な時もある。リリスや討伐隊のメンバーを助けられたようにな。俺はそんな時は迷わずに力を使うことにする」
リリスが心配そうにカインの顔を見つめる中、アイシスは再び冷静な口調で言葉を発した。
「その時は、私も協力するよ。何ができるかはまだわからないが。でも、無茶はしないで。君が倒れたら、この戦いは終わりだから」




