変化
異形の怪物たちとの戦いがようやく終わり、戦場には静寂が戻っていた。カインはその場に立ち尽くし、荒れ果てた大地を見つめていた。力を使いすぎたことを、彼の体が痛みを伴って訴えていた。肩で息をしながら、カインは自らの腕に目を向けた。
「……これは……」
覚醒者の紋様が、いつもなら腕に収まっているはずだった。しかし、今はその範囲が広がり、肩から首、さらには胸元にまで侵食していた。紋様は黒く輝き、まるで体を支配しようとしているかのようだった。
「カイン! 大丈夫?」
リリスが駆け寄ってきた。彼女の表情には明らかな心配が浮かんでいた。彼女の他にも、討伐隊のメンバーたちが集まり、カインを囲んでいた。彼らもまた、カインの異変に気づいていたのだろう。
「少し……無理をしすぎたかもしれない」
カインは弱々しく笑みを浮かべながらも、力強く言った。だが、その声はどこか虚ろで、力を使い果たした疲労が体中に広がっているのを感じていた。脚の力が抜け、倒れそうになるところをリリスが支えた。
「無理しないで。手当てしないと……!」
リリスの声には焦りが混じっていた。討伐隊のメンバーも、今や恐れよりも心配が勝っているようだった。カインが命がけで戦い、彼らを守ったことが、討伐隊の全員にとって大きな意味を持つものになっていた。
「手当てをしよう。こっちに来て」
討伐隊の一人が応急処置の道具を取り出し、カインの腕に巻くようにと促した。リリスや他の隊員たちも協力しながら、カインの体を支え、傷ついた部分に手当てを施していく。力を使いすぎたことで、紋様の侵食が進んだことは明らかだったが、リリスたちはどうにかして彼を助けようと必死だった。
「無理させてしまったな、みんな……」
カインは小さく呟いた。だが、その声を聞いた討伐隊のメンバーたちは、逆に感謝の言葉を返してきた。
「いや、カイン。君がいなければ俺たちは全滅していただろう」
「本当にありがとう。恐れてばかりだったけど、今は感謝しかない」
「君が命を懸けて戦ってくれたから、私たちもここにいる」
次々と感謝の言葉がカインに向けられた。彼の覚醒者としての力に対して抱いていた恐れは、今や彼が彼らを守ってくれたことへの尊敬や感謝に変わりつつあった。カインはその言葉を静かに受け取りながら、再び笑みを浮かべた。
「……ありがとう。みんなが無事で何よりだ」
リリスもまた、カインに優しい微笑みを向けた。
「今は休んで。体を無理させすぎると、後がもっと辛くなるわ」
カインは彼女の言葉に頷き、体を地面に横たえた。討伐隊のメンバーたちが見守る中、彼はようやく少しだけ体を休めることができた。疲労が体全体に広がり、まぶたが重くなる。
戦いは終わったが、カインの体に刻まれた紋様はさらなる代償を求めているかのように輝いていた。彼が覚醒者としての力を使い続ける限り、この代償を払わなければならないことは、誰の目にも明らかだった。




