魔王討伐と英雄の宿命
夜空を貫く一閃の光、続いて響く轟音――魔王城の最奥で行われた最終決戦は、まるで世界の終焉を告げるかのようだった。地面が裂け、空気が震え、闇に閉ざされていた城内に強烈な光が差し込む。カインの剣が魔王の胸を貫いたその瞬間、すべてが静寂に包まれた。
カインは剣を握りしめたまま、息を整えることができなかった。全身が強張り、汗が額を伝う。目の前には、ついに崩れ落ちた魔王の姿があった。かつて世界を恐怖に陥れ、無数の命を奪ったその存在が、今まさに滅び去ろうとしていた。
「…終わった、のか?」
その声は、彼自身のものだったが、どこか現実感が薄かった。長年にわたる戦いが、たった今終わりを告げたのだ。周囲には仲間たちの歓喜の声が響いていた。魔法使いのリリスがその美しい青い髪をなびかせ、勝利を祝う呪文を唱え、騎士のレイナは剣を掲げて仲間に声をかける。
しかし、カインの中には妙な違和感が残っていた。彼はふと、自分の体に残された力の波動を感じ取った。魔王との戦いの中で発揮された「覚醒者」としての力が、消え去るどころか、むしろ強まっているのだ。
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数日後、世界は平和を取り戻したかに見えた。魔王が討たれ、人々はその復興に奔走していた。街は賑わいを見せ、笑顔が戻り始めていた。しかし、その平穏の中で、カインはいまだに安堵を感じることができなかった。
彼は自分一人だけが「覚醒者」としての力を保ち続けていることに気づいていた。魔王との戦いが終わった今、その力は本来役目を終え、次第に失われるはずだった。実際、共に戦った覚醒者たちも、その力が薄れていくのを感じ取っていた。だが、カインだけは違った。
カインの中に眠る力はむしろ増大し、彼の体と精神を引き裂くように荒れ狂っていた。夜ごと、夢の中で見るのは、古代の神々が囁く声だった。彼らはカインを「選ばれし者」と呼び、彼の力を解放せよと訴えかけてくる。
「なぜ俺だけが…」
カインは独り言のように呟いた。かつての仲間たちが次々に新しい日常へと戻る中で、彼は一人、自分が背負った力の重みを抱え続けていた。魔王を倒したのにもかかわらず、彼の心はまだ戦いが終わっていないかのように暗いままだった。
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