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07. リアム・アメイシス


 アンジェラと、今までどおり仲良くする日々が続いた。

 もちろん上辺だけ。

 彼女と一緒にいると疲れるけれど、離れてしまえば彼女が人を陥れるような人間だと証明できる機会も減ってしまう。

 じわりじわりと真綿で首を絞めるように彼女を追いこんでいくつもり。そうすれば、焦って尻尾を出すかもしれない。


 それにしても。

 彼女はどうしてあんなにも私を嫌っていたのだろう。

 私は彼女を信頼しきっていたし、彼女に対して本当にひどいことをした覚えがない。

 何もかもを持って生まれて、何も努力しない私が嫌いだと彼女は言っていた。

 主家の娘で恵まれていた私が、努力家じゃないから許せなかったの? それだけであそこまで嫌う?

 それとも直接的な原因は、リアムだった……?

 わからない。まだそこまでは探れない。


 当面の目標は、アンジェラをこまめにぐぬぬさせつつ、私のイメージアップを図ること。

 嫌われ者のままじゃ、復讐を果たそうにも誰も私の話を信じてくれない。それどころか、アンジェラを陥れたとしてより一層悲惨なことになるかもしれない。

 今まではアンジェラとばかり仲良くしてきたけど、彼女以外に親しい人を作ったりと人間関係にも力を入れていかなきゃ。

 その点、アンジェラは私とあんなに一緒にいたのに、交友範囲も広いのよね。

 放課後のクラブ活動もその一つ。

 アンジェラのクラブ活動は「歴史研究クラブ」。彼女と一緒にいたくて一年生のときに私も入ったけれど、楽しくない上についていけなかったのですぐに辞めた。

 そもそもデリックが部長を務めている時点で楽しいわけがない。


 交友範囲を広げるためにまた別のクラブに入るかどうかは後で考えることにして、とりあえず今日は早く帰って家族と一緒に過ごそうっと。

 そんなことを考えながら校門へと向かっていたところで、後ろから「ローゼリア・ルビーノ」と呼びかけられる。

 また誰かに「アンジェラを傷つけただろう」と言いがかりをつけられるのかと警戒しながら振り向くと、そこに立っていたのは予想外の人物だった。


 つややかな黒髪に、美しい紫色の瞳をもつ長身の男性。たれ目気味の目元と泣きぼくろ、そしてそのきれいな顔立ちに急に懐かしさが呼び起こされる。


「……リアム?」


 そう呼ばれた彼は、口元に笑みを浮かべた。


 リアム・アメイシス。

 幼馴染であり、私の婚約者候補でもある人。

 彼は四大公爵家であるアメイシス家の婚外子であり、さらに次男であるため次期公爵になることが決まっていないから、いまだに「婚約者()()」という中途半端な立ち位置なのよね。

 ただ、アメイシス家の長男は病弱な上、「魔術のアメイシス」を継ぐには心もとない魔力しかなく、その一方でリアムが高い魔力を保有しているため、アメイシス公爵は後継者指名を行っていない。

 リアムが成人である十八歳になったら後継者をどちらにするか決めるとされていて、婚約者となるかそのまま話が流れるかはそれ次第だった。

 ルビーノ家直系の娘を、爵位を継げない男に嫁がせることはできないというのがお父様の考えだったから。

 そんな微妙な関係性の彼だけど……あれ?


「なんで学園の制服を……?」


 思ったことをそのまま口に出してしまい、慌てて口をつぐむ。

 だって、あまりに意外だったから。

 前回の生では、彼は学園の二年生にはならず、通常は学園卒業後に入学資格を得る学院に二年も早く飛び入学していた。

 そんな彼が、なぜ学園の制服を着てここに?


「ようやく……思い出したんだな、ローゼリア。いや、還ってきたというべきか」


「……えっ?」


 彼が何を言っているのか一瞬理解できず、聞き返してしまう。

 彼は今――還ってきたと言ったの?

 まさか。


「君の時を戻したのは俺だ、ローゼリア」


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