02. 過去に戻った?
体に衝撃が走ったような気がして、思いきり息を吸い込んで目を開ける。
……目が、開いた?
見慣れた自室のベッドの天蓋。
え、私……生きてる?
体がどこも痛くない。
もしかして、天国……? それとも助かったの? だとしたら、あれからどれくらい経ったの?
体を起こす。すんなりと起き上がることができた。
見下ろす体に、傷はない。包帯だらけだったはずなのに。
慌ててベッドから降りて、鏡を見る。
ゆるやかに波打つ燃えるような赤い髪。深い緑色の瞳。……傷一つない白い肌。
どういうこと? 理解が追いつかない。
もしかしてあの事故が夢だったの? でもあの痛みを憶えている。夢にしては生々しすぎる。
そこで響くノックの音。
返事をすると、侍女のコニーが入室してきた。
「おはようございます、お嬢様」
「あ、ええ、おはよう」
コニーが少しうれしそうな顔をする。挨拶を返しただけなのに。
懐かしくさえ感じる、コニーの笑顔。ふわりと胸が温かくなった。
「コニー。その……私、事故の怪我から回復したのよね?」
「事故、ですか?」
「私、大怪我をしたでしょう?」
「……? 申し訳ありません、お嬢様が大怪我をなさったことはないかと思いますが……」
やっぱりあの事故は夢だったの?
それとも今夢を見ているの?
わからない……どうしよう。
「お嬢様、体調がお悪いのですか? 今日から二年生という日ではありますが、無理せずお休みされたほうが……」
「……え?」
今日から二年生?
何を言っているの?
私は王立学園の二年生の終わりの日、卒業記念パーティーで、星獣の契約者であるアンジェラをバルコニーから突き落としたと断罪されて……。
「あっ……、申し訳ございません、出過ぎたことを申し上げました」
「それは別にいいわ。コニー。今日は何年の何月何日?」
「? 今日は王国歴二五四年、四月五日でございます」
たしかに、二年生になって初めての登校の日だわ。
どうなっているの。
まさか、過去に戻ったとでもいうの……!?