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聖バスティアーナ学園で執事を目指してたら、神々の戦いに巻き込まれました ~メイドとともに、神を救う~  作者: 東束 末木


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そんなクリスマス

12月24日。

前夜祭にして祭り当日、そんな日本のクリスマスイブである。

水月家では家族揃ってささやかなクリスマスディナーを囲んでいた。

テーブルに並ぶ料理は唐揚げに刺身、ピザ、シーザーサラダ、ナポリタン、ハンバーグとバラエティーに富む……というかこれではクリスマスというより居酒屋だ。


唯一のクリスマスらしさは中央に鎮座するクリスマスケーキ。

白い生クリームに覆われたスポンジにイチゴが並び、砂糖のサンタとチョコレートの板に書かれた『merry X’mas』の文字がクリスマスケーキであることを主張する、そんな分かりやすいクリスマスケーキが切り分けられるその時を待っている。


「それにしても、まさかノアが全国大会に出場するなんてね」

「お姉ちゃん、すごいすごーい」

「そうだな。我が家の自慢の娘だ」


もう何度目かになる家族からの賛辞だが、何度言われてもノアは全身がくすぐったくなる思いで身を(よじ)りたくなる。

「いやまあ何て言うか……まぐれっていうか奇跡っていうか、運がよかったっていうか……」

「おいおい、まぐれや幸運で代表にはなれないだろう。というか学校では絶対にそんな事言うなよ? 中には気を悪くする子もいるかもしれないからな」


そんな父親の指摘に、先日のアカリとの青春握手を思い出しながらノアは頷いた。

「そうだよ! それを言うなら『げんぷーちゃんのおかげ』でしょ、お姉ちゃん」

妹のリコからの鋭い指摘が飛んだ。

「うん、そうだねー。もうほとんどがげんぷーのおかげって言えちゃうかも」


ノアより五歳下のリコは、現在小学五年生。

幼い瞳でノアの成長を見てきた為だろうか、子供らしさを残しながらもしっかり者に育っている。

「だったらげんぷーちゃんも一緒にパーティしなきゃ。お姉ちゃん、げんぷーちゃん出して。いいよね、お母さん?」


「ええ、もちろんよ。ノアの精霊さんなんだから、げんぷーちゃんだって我が家の一員よ」

そう言いながら立ち上がった母親は食器棚から皿を取り出し、げんぷー用に料理を取り分け始めた。

「さあほらお姉ちゃん早く早くっ!」


リコにせかされるままノアはげんぷーを呼び出す。

「げんぷー、ちょっと出てきて」

ノアのすぐ横に姿を現す黒いカメに、リコは大はしゃぎだ。

「うわーい、げんぷーちゃんだー!!」

どうやら色々と言いはしたが、げんぷーに会いたかったというのが本当のところだったらしい。


こうしてケーキ以外にクリスマスらしさが一切感じられない水月家のクリスマス前夜は更けていくのだった。




翌12月25日。

道行く人々の気持ち的にはクリスマスは昨日で終わっているのだが、本来今日はクリスマス当日。

通りに立ち並ぶ店々は、ある店は今日こそがクリスマス当日であると猛アピールし、またある店はクリスマスに見切りをつけ大晦日モードにシフトしたりと、昨日までとは様相も空気感も変わっている。

そんな若葉通りを、ノアはライムと二人歩いていた。


「こうして二人でここを歩くのってさ、何だか久し振りじゃない?」

「そうかもー。夏休みはバイトでずっと一緒だったよねー」

「だね。あっそうだ、折角だからちょっとフタバ姉さんのところに顔出して行こうか?」

「おおー、さんせー」


フタバの店に到着すると、丁度フタバが買物客の見送りに出てくるところだった。

「この冊子を入れときますね。基本的な淹れ方なんかが書いてありますから」

「あら、それは嬉しいわ」

「どうもありがとうございましたー」


客が歩き去ったタイミングを見計らってライムがフタバに声を掛けた。

「フタバ姉さん、こんにちはー」

「おや、ライムとノアじゃないか。何だい、またバイトしに来たのかい?」

「そんな訳ないじゃないですかー。今日はノアとデートなんですー」

「はっはっは、そうかいそうかい。相変わらず仲が良いねえ。まあ中に入んなよ、お茶くらいは出すからさ」


店内に入ると、三人はお客さんが試飲に使うテーブルセットに腰掛けた。

フタバの淹れた緑茶を口にすると緑茶の熱がじんわりと体の内側に広がり、ノアとライムはほうっと息をついた。

「こうして会うのは学園祭以来か、あんたたちの面白い店でさ。あれ何て言ったっけ?」

「あははは、『あるじ喫茶』ですよー」


そして話題は――

「そういえばさ、全国大会の出場選手ってどうなったんだい?」

この時期の風物詩へ。

「うん、ノアが選ばれた」

「へえ、そいつは大したもんだ。流石はバスチアンだねえ」

「あれ? フタバ店長知ってたんですか?」

「まあね。ちょっと店を閉めて実技試験見に行ったからさ」

「ええ!? フタバ姉さん見に来てたの!?」


それから話は明日からの合宿に及び、そしてフタバの話に。

「ああそうそう、年明けからあんたらの学校の特別講師をやる事になったから」

「「は!?」」

「前々から頼まれてたんだけどさ、面倒だしこの店もあったから断ってたんだよ。なんだけどまあ、あんたたちと店をやったのが案外楽しかったからね、ちょっと本気で考えてみたんだよ。で、そしたらちょうど実家のお茶農園の手伝いをしてる妹がこの店の店長代理を引き受けてくれてさ」

「ほえーー、フタバ店長がフタバ先生かー」



客が入ってきたところで別れを告げて店を出た二人は、再び街をぶらぶらし始めた。

「さて、これからどうしよっか」

「ゲーセンって気分じゃないし、お茶飲んだばっかりで喫茶店っていうのもねー」

まあこうして街を歩いているだけで充分楽しい二人なので、どちらかというと本気で考えているというよりは話題として会話を楽しんでいる感じではあるのだが。


「ノアは合宿の持ち物は全部揃ってる?」

「うん、買わなきゃいけないものは特に無いかな」

「そっかそっか、ノアも随分しっかりしてきたねえ」

「ええー、私そんなに頼りないかなー……」


とここでライムがふと思いついた、というか思い出した。

「ああ、そういえば私見たい映画があったんだった」

「おー映画、いいねー。なんていう映画?」

「うん、『スペース執事vsメカ執事』っての」

「ああ、『泣ける、でも意味分からない』って評判のアレかぁ」


若葉通りの一本隣の通りにある映画館に到着すると、目的の映画の上映時間が近づいていた。急いでチケットを買って席に着くと間もなく照明が落ち、スクリーンの中でカメラ頭の怪人が怪しい動きを始める――


そして映画が始まった。




「らいむぅ……なびだ()が……なびだ()がどまらないよぉ」

「私も……途中から涙が溢れて……もう……」

「うん……でも私……」

「ああ、私も……」


感動したわけではない。

哀しかったわけではない。

もちろん涙を流す程笑い転げたわけでもない。

だが不思議と引き込まれるそのストーリーに魂の何処かが激しく揺さぶられ、気付けばいつの間にか涙が溢れていたのである。


「「これ一体何の涙?」」

『泣ける、でも意味が分からない』、その評価の正しさを身をもって感じた二人だった。

そして――


「うおーー、スペース執事ぃ……」

大きなポスターを部屋に貼り、パンフレットの冊子やらグッズやらを大量に買い込む程、アカリがこの映画にドはまりしている事を二人は知らない。



「メカ執事ぃ……アクアルナぁ」

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