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三題噺もどき

偽物

作者: 狐彪

三題噺もどき―ななじゅうなな。

 お題:深呼吸・空元気・水浴び




 太陽の光が差し込み、朝を告げる。

 やけに眩しいそれに、無理やり起こされる。

(……今日、遊ぶ、約束、してた…)

 未だ覚醒しない頭で、今日の予定を思い出す。

 ぼんやりとしたままでも、案外約束事は覚えてるものなんだなと、余計な事を思う。

(なんか、あんまり、行きたくない……)

 寝起きが悪いからか、動きが緩慢な私は、そんなことを思ってしまう。

 約束した時は、それなりに乗り気ではあったのだが。

 ―いざ、当日を迎えてしまうと、やる気が一気に失せた。

 行ったところで、何もいいことがない。

(しかも、あのこ、あんまり、好きじゃないんだよね)

 3人で遊ぶ約束をしているのだが、そのうち1人は苦手なのだ。

 なんというか、距離が近いというか、イライラするというか。

 なれなれしいというか、気持ちが悪いというか。

 ―そもそも、遊びに行くのに奇数というのが分からないし、嫌な予感しかしないのだが。

(まぁ、行くしかないんだけど……)

 断る方が、面倒だし、心の安寧に良くない。

「……」

 脳が完全に覚醒した所で、服を取り出す。

 もうなんか、適当な服で良いか…と思いつつ、服をそろえていく。

 自室からでて、リビングへ。

 もう既に両親は出かけているのか、靴も鞄もなくなっていた。

「……」

 それを横目に確認しつつ、洗面台へ。

 はっきりしていないような顔を起こすために、洗顔などをしていく。

 そのまま、鏡で見たくもない顔を見ながら、身だしなみを整えていく。

「……ん」

 鞄を忘れていたことに気づき、今一度自室へと向かう。

 手に届くところに置いていたそれを片手に持ち、そのままの足で玄関へ。

 大きく深呼吸をし、空元気であろうとも元気で、明るい、女の子を演じる準備をする。

 玄関に置かれている全身鏡には、いかにもな、女の子。

「……よし!」

 玄関を開けると、そこは朝ではあったが、日がかなり高くに上がっており、むしむしとしていた。

 このまま、お風呂に入って、水浴びをしたいぐらいだった。

(ぁーやっぱり、行きたくない……)

 それでも、空元気を演じて、ばれないように、私という人間を隠さなければ。

 どこまでも根暗で、他人が嫌いな、私を。

 どこまでも明るくて、他人が苦ではない、私に。


 もう一度、深呼吸をし直し、完全に切り替える。

「さてと、今日も、頑張って…」

 自分に言い聞かせるように、ポソリと小さく呟いた。


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