波、白く
初めての女性主人公の作品となります。
緩い雰囲気で執筆していくのでどうかよろしくお願いします。
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かつて、この世界には聖戦と呼ばれる、聖霊を巡る戦いがあった。
八属性に渡る精霊、そしてそれらを統べる聖霊、そして原初となる──古代聖霊。
地の古代聖霊、バルオン。
火の古代聖霊、ギリアン。
水の古代聖霊、ウォルーラ。
雷の古代聖霊、ガラッサード。
風の古代聖霊、ソライア。
光の古代聖霊、サクレード。
闇の古代聖霊、ゼルオリス。
時の古代聖霊、ロドベルク。
強大な力を持った〝個〟の者によって起こされた聖戦。
過去、二度起こり、未然となった三度目、その大きな戦いは世界を揺るがし、数多の命が失われた。
その危機を迎え撃った存在こそ、〝英雄〟と呼ばれる存在。
種族問わずに集いし複数の〝英雄達〟により、この世界に再び平和が戻った。
敵同士だった悪魔族、龍族と手を取り、世界中に和平協定が結ばれ、ギルド員になる為の教育機関が成長、そして今日、また一人新しいギルド員となる者が家の扉を開けて口を開く。
「それじゃ、お母さん。行ってきます!」
「行っといで!気をつけてね!」
艶やかな紫色の髪をした、弾ける笑顔の女性が同じような紫の髪をした女性を見送る。
首元がもふもふとした皮のジャケットを羽織った、動きやすそうな軽装、折った髪を留める銀灰のバレッタがその返事と連動するかのように太陽光を反射した。
「さぁ行くぞー!英雄の生まれし場所の一つ!私の勤務場所となるギルド〝パルクオラ支部〟へー!」
「お若いの、そのパルクオラ行きの船、もうすぐで出港しちまうよ」
意気揚々と歩く紫の髪の女性に、散歩途中の老人がそう声をかけた。
老人が指差すその先には汽笛を鳴らし、今にも出港をすらかのような船が一つ。
もう一度汽笛が鳴る時、それがあの船の出港の合図だというのは知っている。
そしてあの船は──彼女が乗る予定の船だった。
「はうあっ!?おじさん!ありがとっ!!待ってぇぇ!!その船乗りまぁあああああす!!!」
「気いつけてな〜……うん?…良い花の香りだ……」
この物語はその〝英雄〟に救われ、またその様な存在に憧れた──
「パルクオラ行きの船。もうすぐ出港しまーす」
「待ってぇええええええええ!!!」
──一人の女性の物語である。