テント屋 サウロの 小さな子猫
サウロは、テントを販売を生業としている。
かわいい子猫ミケランジェロが、その横で喉を鳴らす。
星降る夜に、ミケランジェロは、空へ舞う。
そして、サウロに降りかかる災いとは?
サウロは、テントを販売を生業としている。
その傍らには、猫のミケランジェロ。
スイス生まれの、赤と青と黄色の毛を持つカラフルな3色猫である。
今日も、テントを荷馬車に積んだ後、小さなコンペイ糖を口に放り込んだ。
ポルトガル語のコンフェイトを語源に持つ星型をしたカラフルな砂糖の塊は、疲れた体を癒してくれる。
みゃ~
ミケランジェロが、催促をするように鳴く。
サウロは、コンペイ糖の粒を1つ掴み、ポイと投げた。
ピョンと、飛びついた3色ネコは、両の前足で、見事に星の粒をキャッチし、嬉しそうにゴロゴロとのどを鳴らした。
★彡 ☆彡 ★彡
テントの販売は好調。
明日は、地中海を超えて海の向こうでの商売も行う。
ある夜、サウロは、ミケランジェロを撫でながら、杯をかたむけていた。熟成されたワインで、ごくりと喉を鳴らす。
晴れた空には月。
ふいに、ミケランジェロが、立ち上がる。
尻尾をピンと立たせると、ぴょんと、空中へと舞い上がった。
夜空に星が、流れたのだ。
ふっ。投げたコンペイ糖にでも、見えたか。
サウロは、ニヤリと笑った。
もちろん、前足は、星を掴むことなどできない。ミケランジェロは、クルリと空中で1回転した後、地面に着地・・・
着地するはずだった地面に、土も、石畳もなかった。
そう、そこにあったのは、サウロ自慢の庭の噴水だ。
パシャーン。
着地に失敗した、子猫は、ずぶ濡れになった体をぶるぶると震わせ、辺りに水を散らせると、「くしゅん」と、小さなくしゃみをして走り去ってしまった。
★彡 ☆彡 ★彡
シモン・ケファは、サウロの親友だ。
次の朝、テントを舟に積み込むため、荷物の準備をしていたサウロの元に、シモンが、訪れた。
おや?今日は、どこまで行くんだい?
シモンは、持っていた金色の鍵を手の中で回しながらたずねた。
あぁ、舟で商売に行くんだ。
その時、ミケランジェロが、トコトコと歩いて来た。彼女は、サウロの足元で丸くなると、「くしゅん」と昨夜と同じくしゃみをした。
おや?珍しい。猫が風邪かね?
面白そうに、子猫を見つめるシモンに、サウロは、昨日のミケランジェロの噴水ダイビングを面白そうに話して聞かせた。
ふいに、シモンが、まじめな顔になり、サウロに告げた。
わが友、サウロよ。
舟に乗るのは、やめたまえ。
この子猫は、あなたの身にかかる災いを、警告してくれているのだ。
はっと、目からウロコが落ちる。
シモンの言葉に、サウロは、今度の舟旅を取りやめることとした。
すると、どうだろう。
その2日後、サウロが乗る予定だった舟が、大きな嵐に飲まれたというではないか。
あぁ、ミケランジェロ。
お前のおかげで、私は、嵐を避けることが出来た。
ありがとう。
子猫の頭を撫で、手の平に乗せた小さな星の粒を、ひょいと投げる。
3色猫は、ピョンと小さく飛ぶと、両の前足で、見事に星の粒をキャッチした。
みゃーん
ご主人の身が助かったことなのか、コンペイ糖をゲットしたことなのか、うれしそうな鳴き声をあげながら、ミケランジェロは、カリリとその星粒をかじり、喉を鳴らすのであった。
文字数(空白・改行含まない):1240字
こちらは『冬の童話祭2022』用、超短編小説です。