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過ぎ去るものたちへ  作者: 有瀬快
巡始動編
7/27

00:04.13

1話に「Sample Data」を新たに更新しました。そちらも読んでいただけると幸いです。

前に過徒が人数不足とは言ったが、それでも組織が破綻することはなく、今も存続している。なぜ成り立っているのか。


それは数年前に、今までは必須としていた身分証明書の類の書類提出や受験料を撤廃したからだ。

これにより、身寄りのない者や素行不良の者も過徒に参加できるようになった。

過徒の出現から親族を亡くしたり、住む場所を無くしたりした未成年が大勢現れた。

そういった者たちのために保護施設が設立されているものの、最低限の生活が保障されているだけで、決して幸福な世界とは言えない。そこから脱走する、そもそもそこに収容されることを拒み、自分の力で生きていくという選択を行う者も少なくない。

それが元となって、将来、異能を用いて犯罪に手を染めてしまう人も大勢いる。そうした者でも過徒になれるようにしたというわけだ。


メリットとしては、留徒化する可能性の高い者たちを事前に過徒にし、統制することで留徒の数の増加を抑えられるということだ。

留徒になる恐れが高いのはそういった誰からの庇護も受けずにその日を生き抜いている未成年に多い。異能が発現する前の段階で彼らを異省のもとに置くことで、留徒化する者を減らすことができる。


デメリットとしては、過徒の質や信用が落ち、市民の支持が得られなくなるということだ。

教養の乏しい者たちが自分の安全を、ひいては世界を守る。それをよく思わない人が出てくるのは当然のことだ。実際に、今でも根強い反発がある。それも今は、過徒という組織の立役者であり、現異大臣の源みなもと瑞暉みずきのカリスマ性でどうにかしている。

だが、そうして、過徒、特に誰でもなることのできる矛の過徒の内部はだんだんと無秩序化しつつある。それでまた人気が落ち、応募する人が減り、恵まれない者たちから人員を補うしかなくなる。


そして、2月に行われる建前の筆記試験と身体能力測定を行ったあと、訓練生は異省が管轄している施設に収容される。以降、少なくとも訓練生を終えるまでは外部との連絡は一切禁止となる。

それぞれに割り当てられた部屋の中で、誕生日を迎えるまで一人で過ごすことになるのだ。

その日を迎えるまでは、体力づくりや過徒のシステムや異形についての学習をする。

異能が発現すれば、本部の方に移動し、実技を中心に訓練する。それまでは、館内放送や国営放送のみが視聴できるテレビといった一方通行のメディアと共に過ごす。訓練生同士の交流もない孤独との闘いだ。


さて、ここまでは主に矛の過徒について語ってきた。ここからは、盾の過徒についてだ。

矛はいくらかかつての輝きを失ってしまったが、盾はまだ当初の高潔さを保っているのかもしれない。

盾の主要業務である、異形の殲滅は並大抵の人間にできるわけではなく、生まれ持った才や異能の強さが影響してくる。

そのため、盾の過徒の門を誰にでも開くというわけにはいかず、選抜を行って人員を構成する必要があるのだ。


毎年、異省は形式的にも行われてはいる筆記試験、身体能力測定のなかから上位の者たちに盾の過徒への招待状ともいえる通知を送る。これを受け入れるも拒否するも当人の自由だが、盾を希望するのなら追加で試験を受けなければならない。

それは、異能の強さ、瞬発力、対応力などを総合的に測るもので、なにより初めて対面する自身の異能をどう扱えるかが焦点となる。


しかし、これについて明かされていることは少なく、分かっているのは、異能が現れるタイミングは誕生日によって異なるためその公平性を期す必要があること、そして、少しでも異能の期間を有効に使えるようにする必要があることから、高校受験や大学受験のようなある日に一斉に行う試験の形態ではなく、受験者の誕生日、つまり能力が発現するその日に試験を行うということだけだ。

準備のしようもないぶっつけ本番の試験。それに落ちてしまえば、盾ではなく矛として生きることになる。


矛同様、誕生日までは収容施設で日々を過ごし、当日、この試験に合格すれば晴れて盾の過徒への一歩を踏み出すことができる。そして、矛は矛の、盾は盾の、それぞれ専門の訓練内容を行い、そこでもまたいくつかの試練を乗り越え、過徒の一員となることができる。

書き溜めたので、しばらく毎日更新します。

次話は1/25 23:00に更新されます。

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