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過ぎ去るものたちへ  作者: 有瀬快
巡始動編
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00:01.25

過徒、それは16歳の誕生日0時から20歳の誕生日0時の間に発現する異能を世の秩序を守る為に行使する者たち。彼らは政府が管轄する異省にて「矛」と「盾」に分かれて活動する。


矛は留徒、つまりは異能を私利私欲の為、あるいは単に人を傷つけたいが為に使用する者たちを取り締まるための粛清機関。そして、盾は突如と発生した異形という正体不明の生物からこの国とそこに住む人々を守るための防御機関。


過徒のメンバーは矛が約400名、盾が約40名。過徒になりたいと願う、あるいはならなければならない者は15歳になる年度の2月に行われる筆記試験、及び身体能力測定に参加する必要がある。

そこで毎年上位110名が選出され、過徒の仲間入りを果たすことができる。更に上位20名は盾に所属するための実技試験を受けることができる。そのうち、実際に試験を合格し、盾に所属するのはおよそ10名。合格できなかったもの、あえてしなかったものは矛に所属することになる。

こうして、悪を滅ぼし、人理を守る過徒は構成されている。


だが、今述べたところについて、いくつか訂正しなければならない箇所がある。


過徒は決して、人々が憧れ、誰もがなりたいと願うようなものではない。かつてはそういうものだったかもしれない。しかし、今は違う。


留徒や異形による被害は年々酷くなっていくばかりで、それらと戦い、命を落としてしまう過徒も少なくない。また、16歳から20歳までの多感な時期を、機密情報漏洩を防ぐために監禁にも等しい環境で過ごさなければならない。

このような境遇を自ら望んで選ぶ者はなかなかいない。


しかし、良いことが何もないわけではない。


彼らは公務員の扱いを受けるため給料が支払われる。

また四年間、優秀な成績を残し、生き延びることができれば、そのままエスカレーター方式で異省関係の仕事に就くことができる。中でも盾を経験した過徒の待遇は別格だ。異省の中でも上級の職に就くのも夢ではない。また、メディアや国民からは英雄ともてはやされるだろう。

だが、矛になるにしろ、盾になるにしろ、これらのことはあまりにもリスクが高い。ある程度、勉強ができるのであれば、高校や大学等に行った方がいい。

チヤホヤされたいのなら、別の手段を取ればいい。やり方は無数にあるだろう。最近は異能を使用してもいい対人スポーツも開催され始めている。その選手を目指すなどがいいかもしれない。そちらの方が安全で、やり直しがきく。

そのような背景があって、現状の過徒は恐ろしいまでの人員不足に悩まされている。


その結果として、過徒の現状は、かつてのような洗練された人間が人類のために、世界のためにその身を犠牲にして戦うというものではなくなった。

筆記試験というのも名ばかりのものになってしまっている。

名前をかければ合格……とまでは流石にいかないが、最低限の知識があれば合格できる。その後の身体能力測定に関しても、余程のことがない限り、落とされはしない。


過徒は、特別職という甘い蜜を吸い、今までの苦しい生活を変えるために、平等に表れる異能に望みにかける人々の集団となっている。

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