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過ぎ去るものたちへ  作者: 有瀬快
巡始動編
17/27

00:32.11

四足歩行型のオートマータは荒々しい足音を立てながら、森の中に入ってきた。

目は無い。鼻もない。

だが、確実に、それは狙った獲物に近づいていく。

とある一本の木にたどり着く。

辺りを見渡す。

何もいない。

間違えているはずはない。確実に獲物はここにいる。

そういわんばかりに、その木の周りをうろつく。

そして、上を見上げ……


巡は、枝から飛び降り、思いっきり、そのオートマータを踏みつける。

少し足を捻る。

だが、向こうが体勢を立て直すよりも前に立ち上がる。

オートマータは、頭に大きな凹みを作って、倒れていた。

その傍に急いで寄り、腹部を蹴り始める。

初めは大きく重く、次第にその速度は増していく。

蹴って、蹴って、蹴りまくる。

ただそのことだけを考えていた。


どれだけやっていただろうか。

いつしか、オートマータは完全に沈黙していた。

はぁはぁと激しく息を切らしながらその場に座り込む。

巡の考察を当たっていた。

噛みつかれる前に一瞬見えたものを巡は見逃していなかった。


核だ。


異形には核がある。

異形にはいくつか種類がある。二足歩行をするもの、四足歩行をするもの、地を這うもの、空を飛ぶもの、長い尾を持つものなど、様々な容姿をしている。黒い靄を纏ったそれらのどれもが胸部に当たる部分に核をしまいこんでいる。核が発する光が体の外部に漏れ出ているものいれば、しっかりと厚い装甲でもってそれを守るものもいる。いずれにせよ、その核を破壊すれば、異形は倒れる。


あのオートマータは、異形に見立てたものに違いない。

それならば、異形の唯一の弱点、核があるはずだ。

腹部から漏れ出る光は核を表していたのだろう。

ただ、その願望ともいえる思いだけでこの作戦を実行したが、結果、成功してよかった。

あの状況で、迅速に木の上に登れた自分を褒めてやりたい。


しかし、実際のところ、状況は絶望的だ。

右足に少しの違和感がある。だが、歩けないというほどではない。


それよりも遥かに深刻なことがある。

木に登る時に気が付いたが、左腕に着けていた腕時計が壊れてしまっていた。

腕時計は液晶に亀裂が走り、21:15.13を示したまま動かない。

これでは、あとどれほど時間が残されているのかが一切分からない。


さらに、相変わらず異能が表れる気配も未だに感じられない。

木登りが超人的に上手くなるという異能の可能性は否定できないが、きっと違う。というか、違ってくれ。

蹴ることに特化した異能でもないようだ。

鉄の塊を蹴った足がずきずきと痛む。


(それに……)


それに、もしも仮に、この試験に合格したとしても果たして自分はその先どうなるのか。

異能を持たざる過徒なんていう肩書がもらえたらこの上ないが、きっとそうはならない。

異能が無ければ、異形どころか留徒にすら勝てない。


それでも、今は進むしかない。


巡は立ち上がり、恐る恐るオートマータに近づく。

近くで見ると、ところどころ錆びついた様子が分かる。

何か武器にはならないかと思ったが、牙も爪もとても素手で取り外せそうもない。

次、あれに襲われたら、一体どうなってしまうのだろう。

敵の強さもどんどん強くなっていくに違いない。


(異能さえあれば……)


そう思わずにはいられない。

しかし、目下の課題としては時間だ。

残り時間が分からなければ今後の施策も立てられない。

ゆっくりと息を吸う。


(1、2、3、4、5……)


そう数え初め、それに合わせて痛む足を踏み出す。


(6、7、8、9、10、11、12、13……)


体に染みつくように、確実に自分の体に時を刻む。

止まることはもう許されない。

見えない終着点に向かって巡は進みだした。

見えない秒針を抱えて。


次話は2/4 23:00に更新されます。日付調整のため、1日お休みさせていただきます。


毎度、読んでくださり、ありがとうございます。


続きが読みたいと思っていただけましたら、評価・ブクマ等をしていただけると作者の励みになります。

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