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過ぎ去るものたちへ  作者: 有瀬快
巡始動編
15/27

00:23.51

何もできない。


2時間は続けていただろうか。何か出て来ないかと手を前にかざし、力んでみたり、超人的な力がついてないか、飛び跳ねて、走って確認してみたりとありとあらゆることを試した。しかし、炎を身にまとうことも、空高くまで跳躍することも、身体を硬質化させることはなかった。異能が発現しないのである。


「どうして。どうして、どうして、どうして、どうして!」


焦りのあまり、苛立ちが言葉に出た。

巡は今、森の中にいた。あの後、しばらく歩いていると、広い空間に出た。木が生い茂り、床も今までのような固いタイルのようなものではなく、やわらかい土だった。思えば、これも久々に踏みしめたもののような気もした。

だが、今はそんなことはどうでもよかった。


16歳の誕生日を迎えると発現する異能。一般的に0時を迎えると、それは比較的すぐに表れる。早いものは数分で、平均的には1時間、遅くとも2時間で異能は発現する。それを超えてしまった場合、異能の獲得は絶望的である。しかし、そのような者は極稀だ。極稀だという言い方はしたが、これは全ての16歳の子供の異能を完璧に把握しているわけではないため、断言を避けているだけである。つまり、例外なく、全ての子供は16歳を迎えると異能を発現させると言っても問題ないだろう。


それが、発現しない。

何をしても発現しないのである。


「ダメだっ!」


吐き捨てるように言い、その場に座り込む。

一つだけ希望を持てることがあるとすれば、この試験は「脱出」を達成すれば合格となることだ。

しかし、先のオートマータからしてこの先も障害が用意されていることは容易に想像がつく。

それらを異能無しに乗り越えるのは至難の業だろう。

だがこうなってしまった以上、それでもやるしかない。


(それにまだ異能が無いと決まったわけじゃない。何かしらの条件下でのみ発動するタイプも存在すると聞いたことがある……)


焦る気持ち抑えて、自分に言い聞かせる。


(そうだ。絶体絶命の時に何かが起こるかもしれない)


心理的にはもう十分に絶体絶命だという心の声は無視した。


巡は立ち上がり、このエリアから去る出口を探すため、あたりを見渡す。

周りの木は大きく、幹や枝もしっかりとしていて丈夫そうだ。

上を見上げると、そこには重なる葉や枝によって作り出された、吸い込まれるような闇があった。


ここに来てから落ちついて探索する余裕がなかったため、あまり気が付かなかったがどうやらここはそれなりに広い空間のようだった。

深呼吸をしてみる。土や草、そういった自然の匂いが鼻いっぱいに広がる。

まるで本物の森の中にいるようだった。


だが、違和感は拭えない。

森にしてはあまりにも静かすぎる。

一度、叔父と叔母に連れられて茨城の筑波山にいったことを思い出した。

あそこでは名もよくわからない鳥や虫がたくさん鳴いていた。

それにもっと光が差していた。ここは暗すぎる。

そんなことを考えていると、心も少し落ち着いたようだ。


出口はあまり苦労せずに見つけられた。

この薄暗さの中であの光に気が付かない方が難しいだろう。

警戒を怠らずに、だが迅速に進んでいく。


時計は21:31.48を表していた。

次話は2/1 23:00に更新されます。

毎度、読んでくださり、ありがとうございます。

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