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過ぎ去るものたちへ  作者: 有瀬快
巡始動編
13/27

00:16.38

中に入ると、またもや後ろの扉が閉められた。暗い。だが、あの機体の中のような真っ暗さではない。


「これより、試験内容について説明する」


突然、目の前の大型スクリーンが点灯し、声が流れ始めた。

スクリーンの右上には現在の日付と時刻が表示されていた。

巡がそれを把握する間もなく、声は一方的に流れる。



「現在の時刻は20時48分。これより、試験についての説明を行う。

24時間以内に、施設から脱出せよ。出口は一つしかない。


試験開始30分前になると隣の部屋への扉が開錠される。次の部屋へ進み、そこで背嚢を受け取れ。その中には水2Lと携帯食料3食分、携帯トイレ、信号拳銃と信号弾、そして、腕時計が入っている。それ以外の荷物の持ち込みは一切認めない。また衣服に関しても、事前に着用してもらったものをそのまま使ってもらう。


脱出までの手段は一切問わない。施設内で何をしようが自由である。地道に堅実に進み続けるのも良いし、物を破壊しながら進んでいくのも良い。異能の使用もこの試験期間中に限り、自由に扱っていい。しかし、我々の用意するただ一つの出口からの脱出のみが合格対象となり、それ以外の脱出経路を用いた場合は失格となる。


また、試験を途中で棄権する場合、頭上に信号弾を打ち上げるように。いかなる理由であっても、即刻、試験を中止し、受験者の回収を行う。


ただ今から試験終了までの間、質問は禁じる。


この放送を再度聞きたい場合は机横のボタンを押すように。以上。」



実に分かりやすいが肝心なところは曖昧なスライドを映したスクリーンと共に音声は消えた。

機械ではない、抑揚のある男の声だった。録音されたものではあるだろうが、それでも久しぶりの人間の営みに触れることができた巡は気分が高揚した。


しかし、すぐに目の前には試験が迫っているという現実に引き戻された。


(“脱出せよ”……って、脱出ゲームみたいなことか?)


もっと詳細な説明がここでもらえると思っていたが、予想していたよりも情報が少なく、巡は焦った。


施設というものの規模が全くもって分からない。24時間という時間の価値もまた分からない。脱出するには十分な時間なのか。短い時間なのか。

そして、戦闘行為も免れないだろう。しかし、一体何に襲われるというのか。

現役の過徒なら勝てるわけない。凶暴な動物だって無理だ。

思考がまとまらない。次から次へと不安が押し上げてくる。


部屋の中央にある椅子にゆっくりと腰をかける。机の上には食事が用意されていた。

もう一度、放送を聞く必要は感じられなかった。頭の中には先ほどの放送文が何度も反復してした。


「今できる最大限のことをしよう。考えるんだ。起こりうることを全部考えよう」


震える手足を無視して、平静を装うために声に出してみる。


(もしも、途中で大きな怪我でもしたら……)


蓋を取り外す。


(もしも、異能が現れなかったら……)


食べ物を口に運ぶ。


(もしも、失敗して盾の過徒になれなかったら……)


何も味がしなかった。

次話は1/30 23:00に更新されます。

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