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Sample Data
それは中央に立ち尽くしていた。
異形である。
大きさは3メートルほどか。
異形である。
光沢を放ちながらも、ところどころ錆が目立つ。
異形である。
中央部分に置かれた、ほぼ円に近い角ばった装置に明りが灯る。
異形である。
不気味な機械仕掛けの音を響かせながらそれは存在しない目でこちらを睨む。
その歪な体躯をこちらめがけて突進させる。
早い。速い。
それを間一髪で回避する。
生じた風で殺されそうになる。
息が切れてくる。視界が曖昧になってくる。
攻撃は止まない。
その一撃一撃、全てが無茶苦茶で、全てが終わりに繋がる。
その一撃一撃、全てを無我夢中に、全てを繋ぐ為に躱す。
反撃の兆しはない。
常に最悪が繰り出される。
意識が朦朧としてくる。
永遠には続けられない。
後方へ避ける。
扉から遠ざかる。
段差に躓き、転ぶ。
自分の体が影に覆われる。
それは腕を大きく振り上げる。
壊れた時計が視界に映る。
「あとどれほど時間が残っているのだろうか」