第2話
家に連れ帰ったアイツ・・・・ショップの店員は雌だと言っていた。
名前はまだ決めかねていた。
もう少し様子をみて決めようと思った。
そろそろ落ち着いた頃、勧められた餌を与えることにした。
それは冷凍のハツカネズミ。
20匹で3000円だった。
週に2匹程度食べるらしい。
最初は恐る恐るピンセットで鼻先に近づける。
こんなに大きいものを本当に食べるのだろうか。
多少、不安に思いながらも 解凍し人肌に温めたマウスをアイツ、いや彼女の目の前でユラユラと動かした。
すると、彼女はゆっくりとマウスに近づき マウスの頭にかぶりつき、とぐろを巻、既に息の無いマウスを締め付けていった。
初めて目の前で繰り広げられる蛇の食事シーン・・・・・
残酷と言うより神秘性を感じたオレ。
その光景に釘付けになった。
マウスは次第に頭から尻尾まで まるで暗い洞窟へと吸い込まれるように消えてなくなった。
大きく膨れ上がった彼女の喉元をジッと見つめているオレに 彼女は大あくびをして見せた。
彼女の目とオレの目が合った。
その時、オレには彼女が微笑んだように思えた・・・・・・・
その夜、オレは夢を見た。
この不況のさなか、オレをリストラした直属の上司。
正社員として10年間、サービス残業や休日出勤も一生懸命やってきたのに。
それなのに課内の評価は悪かった。
何がいけなかったのか・・・・・
突然のリストラ勧告に、いまだにオレは納得していなかった。
夢の中で上司は深い谷底に落ちていた。
足でも滑らせたのだろうか。
以外にも身体は無傷で、まるで眠っているかのように安らかな顔だった。
夢にしては、あまりにもリアルな映像は目が覚めても頭から離れなかった。
そうだ、上司は登山が趣味だったな。
ふと、思い出した。
ベッドから起き上がり、彼女のいるガラス水槽を見ると彼女もまたオレを見つめていた。
なんとなく 彼女の身体が一回り大きくなったような気がした・・・・・・。