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六話 正義執行

「はひぃっ!!ななな、なんですかあの人たち!?」

 秋葉は妖しい軍団の放つ殺気に戦慄して、思わず数歩後ずさる。


「うん。あいつらがさっき俺が言ってた"厄介な奴ら"だよ。ま、六匹とは、聞いてた噂よりちょいと多い気がするけどな」


「あらあら、どれもこれも、とんがった槍なんか持っちゃって……」


「ん?ああ。ま、丘に逃げりゃなんてことはないらしいからよ、ここはさっさと退散といこーぜ?」

 人狼の青年はその場で軽快にピョンピョンと跳ね、正体不明の一団からの逃走をうながした。


「え?丘に逃げればって、大体アイツら何者よ?」

 さすがは多くの怪人を退治してきたヒロイン。迫りくる武装集団などものともせず、むしろそれらの不穏な影たちに闘志を燃やしていた。


「んー、アイツら"邪海兵団"っつってよ、ま、平たくいえば見たまんま"海の幸"の化け物ってとこかなー?かなり手強いらしいけど、どーやら陸で戦うのは苦手らしいぜ?」


「フン。なるほど、ね。でも、あんな怪人たちを野放しにしておくなんて危険だわ。地域の住民はどう思ってるの?」

 と言ったピンクアローの声は、思わずハッとさせられるほどに(りん)としていた。


「ん?まぁ確かに、この辺りに住む女子供なんかは、この海岸にゃめったに寄りつかねえけどよ……でもよー、んなこと言い出したら──」


「えっ!?ピンクさん?まさか……」


「そうよ!私はマーベラスファイブのピンクアロー!どんな世界にあろうとも正義の執行をためらうことはないわ!」

 言い放ったピンクアローは謎のポーズをきめたかと思うと、颯爽と海岸へと歩み始めた。


「いっ!?アンタ、別にやらなくてもいいケンカをワザワザ買おうってのか!?おいおい!気は確かか!?覚えたてのステータスをのぞいてみなよ!」


「あ、そか。よく考えればこのステータスってホント便利ですよねー。あらかじめ敵の力が分かれば、無用な争いを避けることができますも……ひぃあぁっ!!」


 それぞれが身の丈二メートルほどの武装集団はエビ、シャコ、またカニにそっくりな頭部の目玉をギラギラとさせてこちらに油断なく迫ってくる。


「フン!そんなのワザワザ見るまでもないでしょう?……えぇと、あのエビみたいなのなんか、レベル:29、筋力は37で知力3って、フフン!典型的な腕力だけがたよりのおバカ怪人ね。でー色々あってー……総合戦闘力:306って……どうなの?コレ」

 手短に最寄りの魔物の分析をすませたヒロインは自らを指しながら振り返る。


 そう、いくら便利だとはいえ、自分で自分のステータスを閲覧することは出来ないのだ。


「──あの……そ、そんな勇敢なピンクさんにとっても残念なお知らせがありますぅー。ジャジャーン!なんと本日のピンクさんの総合戦闘力は、たったの255でしたー」

 秋葉は親指を立て、絶望的状況を報告した。


「はっ!?ウソでしょ!?」


「嘘でも夢でもねぇよー……。まぁこいつらなんかと無理して戦う意味も価値もねぇんだからよー、さっさと村に帰ろうぜー」

 人狼はウンザリしたような顔で丘の方角を指差した。


「で、す、よ、ねー!?おーい!ドラコー!早くぅ!コッチコッチー!」

 秋葉は、今やドラコ666號のすぐ背後にまで迫った邪海兵団を指差し、緊急の避難勧告を発令した。


 と、そこへ両腕の肘から先に炎をまとわせたピンクアローが殺到する。


「ちょっとトカゲ怪人!そこをどきなさい!その魚介類たちは、みーんな私が蹴散らしてみせるんだから!」


 その勇ましい声に応えるように、剣呑な海の幸らは、グングンと迫りくるピンクのバトルスーツへと頭をもたげ、手にした長い槍を構え直した。


「おーい!ピンクさーん!今日のところは止めておきましょーよー!?ホント死んじゃいますよー!?」


「フン!バカおっしゃい!どこの世界に"多少不利"ってだけで、目の前の悪から尻尾巻いて逃げ出すヒロインがいて?」


 好戦的なヒロインは秋葉の警告など鼻で笑って、炎の尾をひく華麗な飛び蹴りで、その名に相応しい一矢(アロー)となって突撃した。

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