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一話 覚醒

 よせてはかえす潮騒の音が遠く聴こえる──


「う、う……ん」


 薄く(うめ)いたのは、波打ち際にあお向けで倒れているピンクアロー。

 その桃色の全身スーツとヘルメットは砂と得体の知れない海草にまみれていた。


「ん……な、なに?」


 高性能な特殊ゴーグルを通して見えた物とは、訝しげに自分を覗き込むヒゲ面だった。


「おーい」


「えっ?な、なによ?」


 ピンクアローは未だ朦朧としつつ、どんよりとした定まらない思考で、まるで夢の続きでも見ているようにボンヤリと返した。


「あのよ、お前生きてるのか?」


 男は精悍な顔を影にして問いかけてきた。

 どうやら今時分は夕刻で、生ぬるいような汐風から察するに季節は夏であるらしかった。


「はぁ?生きてるかって……生きてるから返事出来たんでしょう、が」


「そうか、それもそうだな。お前達はココらじゃーちょいと見ない顔だなぁ。アハハ面白い兜だなーソレ。どーした?船でも難破したってか?」


「えっ?船?船ですってぇ!?あ痛たたた……」


 ピンクアローは無造作に半身を起こしたが、唐突に刺すような頭痛にみまわれ、濡れたヘルメットの頭を抱えた。


「っはぁ。うー……あれ?ちょっとー!私ったら、なーんでこんな砂浜で寝てるのよ?確か……"黒い日曜日"のアジトを探り当てて──」

 砂浜に体育座りで記憶を手繰(たぐ)る。


「はっ!?仲間は!?一緒に突入したみんなはどこ?」

 慌てて茜色に染まる辺りを見渡す。


「うおっ。割りと元気だなぁお前。仲間ってアレのことか?」

 男が斜め後方を指して訊いてきた。


 見れば、そこには白衣に黒いスラックスの女らしき者がうつぶせになって倒れており、ドロドロとした砂まみれの頭をこちらに向けていた。


「あっ!お、思い出したぁ!!あの女、悪の組織の研究員の一人で、あの時私の腰に抱きついてきた女だ!」


 この急激な覚醒を見ていた男は、ギョッとしてのけ反った。


「わ、うるっせえ女だな。一体どこのナニもんだよ……」

 呆れたように言って、左のコメカミ辺りに無骨な手の先、その人差し指と中指をあててピンクアローをしげしげと眺める。


「はぁ?なんだぁ?この【職業:正義のスーパー戦隊マーベラスファイブ】ってのは?こんな変な職業(ジョブ)は聞いたこともねぇぞ?」

 男は小首をかしげながら飽きもせずピンクアローを眺めている。


「え!?なんですって!?あなた、なんで私がマーベラスファイブって知ってるのよ!?あ分かった!あなた、さては私のファンね?」

 一瞬困惑したピンクアローだったが、自らの胸元を見下ろし、そこに輝く【V】の銀バッヂを確認して、なぁるほどと納得した。


「ん?なんでって……そりゃお前。"ステータス"見りゃ一発で解んだろが?」

 今度は男が困惑する番だった。


「はっ?な、なによ?その"すてーたす"って!?」

 ピンクのヒロインは何とも言えない気味の悪さを感じ、思わずヘルメットの中で怪訝な顔をつくって、ボロを纏った謎の男を睨み返した。

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