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お姉様達のお食事会

ブッチャー女学院の敷地内にあるレストランの数は五つ。その中の一つイタリアンレストランのルチアーノ


日差しの強い初夏の午後。僕と千鶴さんは避暑地を訪れる感覚で、このレストランへ入店した


「突然お誘いしてしまって申し訳ございません」


クーラーが完備されている涼しい教室内から、日陰を通ったとは言え十分ぐらい外の暑さを体験したと言うのに、千鶴さんは殆ど汗をかいていない

 

「いえ、僕も今日は何処かで食べようと思っていましたので、お誘い嬉しかったです」


昨日は色んな事があって、お弁当の準備が出来なかった


「そう言って頂けると、私の方こそ嬉しいです。今まで余り、どなたかを誘った事が無いものですから、何かご無礼があるのではないかと、胸がドキドキしていました」


ホッとした様に千鶴さんは微笑んだ


「こんなに美味しいお食事のお誘いならいつでも大歓迎ですよ」


そう、本当に美味しい。今僕が食べているものは、ウニクリームのパスタ


元三ツ星レストランでシェフをしていた人が、此処の料理長をしているらしく、値段も構結するのだけど、店内の生徒数は上々だ


「本当にいくらでも食べれてしまいそう」


右手にフォーク、左手はスプーンを使い、 スプーンの上でパスタを巻くようにして少しずつ食べる。ちょっとめんどくさい


「ふふ。美里のお食事は、本当に女性らしくて憧れてしまいます」


「千鶴さんの方こそ」


ピンと背筋を伸ばし、音も無くパスタを食べる姿は美しい


「私、パスタ好きなんです。お蕎麦なども好き」


「僕も麺類好きです。此処に来る前はラーメンばかり食べていました」


カップラーメンだけど


「らーめん?」


「えっと……ご存知ない?」


「ごめんなさい。私、世間知らずで……」


「いえ、いいんですよあんな物!」


ごめん、ラーメン


「でも美里がよく食べていたらーめん。私も一度食べてみたいです。珍しい食べ物なのですか?」


「め、珍しくはないと思いますが……」


そういえば、この学院内で見たことない


「う〜ん……あ! もしかしたら夕凪がインスタント持ってるかも」


前は僕以上に食べてたし


「持ってる? いんすたんと??」


「後で夕凪に聞いてみましょう」


顔にいくつもハテナマークが付いている千鶴さんに、僕はそう言って微笑んだ




「一億ゼニー」


お昼休みが終わって教室に戻った僕が、夕凪にラーメンの事を訪ねた後の答えがこれ


「い、一億って……」


「桃白白への依頼料ぐらいの価値があるわ」


そう言ってふん、と鼻息をならす


「一個ぐらいくれてもじゃない」


「もう一個しか無いのよ! あれは素敵な殿方と、夜明けのコーヒーを飲みながら二人で一組の箸を使って「おいしいね」「君の方が美味しかったさ」とか言って、チチクリ合いながら食べるの!!」


「随分変った殿方だね。そんな変な殿方より、千鶴さんを喜ばせてあげよう?」


「喜ぶかしらね〜。……とにかく駄目!」


「そこを何とか! さっき皆に聞いてみたけど、どうもラーメンなんて無さそうなんだ」


「ラーメンが無ければケーキを食べなさい」


女王の様な威厳で言い放されてしまった……


「……駄目?」


「そ、そんな捨てられた子犬の様な顔をしても駄目!」


「そんな顔してないよ……残念」


夕凪は頑固だからなぁ……


「あの……」


僕らを呼ぶ声に顔を上げると、千鶴さんが困った顔をして僕らを見ていた


「ごめんなさい。盗み聞きするつもりは無かったのですが……」


「あ……」


良く見ると、クラス中の女の子達が不思議そうに僕らを見ている


「声が大き過ぎましたね……ごめんなさい皆さん」


「んーん、いーの。それより美里さん。らーめんて凄いのね」


夕凪の前の席にいる希美花さんが、興味深深と言った顔で尋ねて来た


「一億円の食事……是非みたいわ。ねえ夕凪さん。一億は小切手でも?」


「ずるいわよ華怜! あたくしは即金で二億夕凪さんの口座に振り込むわ!!」


「ワタシはルノワールの絵画を!」


クラス内は一瞬でオークション会場となり、値段はどんどんつり上がってゆく


「…………ゆ、夕凪?」


何だかとんでもない事に……


「………………え、えぇい、判った!! タダで良いわよ、タダで! 今日は寮の食堂でお食事会よ!!」


こうして、後にブッチャー女学院の歴史に残るであろうお食事会は、始まったのでした

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