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ピンチなお兄様 3

綾菜さんはロールスロイスの脇に立ち、しげしげと僕を見ていた


「み、美里さん……ですよね? 随分ラフな格好をしていらっしゃいますけど」


綾菜さんは、僅かだけど侮蔑を感じる口調でそう言った


「え、えっと……」


「失礼します、お嬢様」


運転席からグレーのスーツを着た若い男性が慌てて降りて来て、綾菜さんの傍らに立ち、黒い日傘を綾菜さんの頭上に広げて差しかざす


「美里さん……ですよね?」


ボレロ付きの白いワンピースを着た綾菜さんは、傘によって出来た日陰の中から不安げに僕を見上げ、再びそう尋ねる


時に人生は後々まで影響する重要な選択を迫られる時があると、誰かが言っていた。今、この時こそが僕にとってそれかも!


考えろ、考えろ〜


「…………」


綾菜さんは、じーっと僕を見つめる。今は胸パットをしていないし、じっくり見られれば流石にバレてしまうだろう。どうすれば……


「……みさ」


「み、美里を知ってるの?」


「え?」


「ぼ……俺は美里の兄の美……太郎です。よ、宜しく」


「はぁ、お兄様……ですか」


疑わしそうに僕を見る綾菜さん。せ、選択を間違えた?


「……失礼しました。お顔と雰囲気良く似ていらっしゃいましたから、間違えてしまいました。ですが、改めてそう言われますと、とても精悍で男性らしい方ですね。何故間違えてしまったのでしょう」


綾菜さんは何処かホッとしたように、そう言う


「そ、そうですか?」


男らしい……ただのフォローなんだろうけど、ちょっと嬉しい


「いつも美里さんにはお世話になっております」


「そ、そうですか、あはは〜。じ、じゃあ僕……俺はこれで」


汗を拭き、僕はいそいそとこの場所から離れようと後ずさり……


「あ……み、美太郎様。もし宜しければご一緒にお食事を如何です? 今から、らーめんと言う物を食べに行くのですが……」


「ラーメンですか?」


すると、お店を貸し切ったのは綾菜さんかな


「美太郎様にとっては、らーめんなど低俗で野蛮な庶民と言う名の豚どもの残飯かと思われているでしょうが……」


主食です


「概ねその通りなのですが……、それが食べてみると凄く美味しくて! 遂にはこうして人目を忍んで一人で食べに行く迄に……。美太郎様、お願いです。この事はどうか美里さんにはお話しないで下さい」


綾菜さんは不安げに僕を見つめ、言葉を待った


「え、ええ、判りました。ぼ……俺もラーメン良く食べますし」


「ああ、やっぱり! お店から美太郎様が出て来ていらっしゃった様にお見受けしたので、もしかしたらと思ったのです」


綾菜さんは嬉しそうに、パンと手を叩いた


「あ、す、すみません。お仲間の方がいらっしゃったと思いましたら、とっても嬉しくて興奮してしまいました。お恥ずかしいです……」


「あはは、僕も嬉しいですよ。新しいラーメン仲間が出来て」


僕がそう言うと、綾菜さんの顔はパッと明るくなり、年相応の女の子らしい笑顔を見せてくれた


学園でも何度か会った事あるけど、綾菜さんはキビキビとしていて、笑顔を簡単には見せない感じの人。

 今も凄く人気の綾菜さんにこの笑顔が+されたら無敵かもね


「それじゃ、北条さん。ラーメン仲間どうし、お食事に行きましょうか」


「はい!」




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