お姉様の休日 3
新井さんと別れ、校門に向かって歩く事十五分。 ようやく白くて大きな表門へと辿り着く
表門は高さ3メートル、幅5.5メートル程の大きさで、両開き。
侵入され難い様、威圧感を出す為に見た目を鉄格子に近くしている
……いや、鉄格子そのものかもしれない。生徒によっては三年間、この門の外側へ出る事が出来ない人もいるのだ
学院の周りは赤レンガと監視カメラに囲まれ、門やその付近には警備員が常駐している
門以外の場所院から学院を出ようとすればたちまちベルが鳴り響き、周囲一帯は直ぐさま閉鎖される
元々山を切り開いて無理矢理平らにし、創ったこの学院。その周囲山々は全て学院の所有地であり閉鎖されてしまえば逃げようが無い。
連れ戻され三日反省室に入れられるだけ……
酷い学院だと思う。
ただ救われるのは、ここの生徒はみんな明るくていい子達ばかりで、伸び伸びとしている
もしかしたら途中から入った僕らには考えられない学院だと感じるけど、元々お嬢様として育てられ、自由が余り無かったであろう彼女達にとっては普通の事なのかも知れない
「こんにちは」
そんな事を考えながら、僕は門の横にある警備室の窓口に居た、若い女性警備員へ声を掛ける
「こんにちは。何かありましたか?」
「はい。本日外出する予定の新城 美里です。こちらが外出許可書です」
「ああ、はい連絡頂いています。ちょっと許可書をお借りしますね……はい、大丈夫です。街へ下りるのでしたら表にお車を手配しましょうか?」
「いえ、久しぶりの外出ですから、木々や空などを見ながらゆっくり歩いて行きます。それにボディガードも直ぐ近くにいますから」
僕の事だけど
「そうですか。本来ならお供の方が居ないと、車をお出ししなくてはならないのですが、Aクラスの方でしたら大丈夫ですね。どうぞお気をつけて」
そう言いながら警備員さんは何処かへ連絡する。すると、門が自動的に開いていった
「ありがとうございます警備員さん。行ってきます」
約二ヶ月ぶりとなる檻の外。逸る気持ちを抑え、僕はゆっくり門の外へと向かって歩き出した
「う~ん!」
学院の外に出て先ず最初にする事、それはやっぱり体の伸びと深呼吸。
青々とした木々の香りが心地良い
今はまだ、朝と呼べる時刻。既に太陽は高く昇っていて、日差しは強い。 この分じゃ、一時間歩いただけで肌をあっという間に黒く焼いてしまうだろう……
でもいっか。
一応日焼け止めはしているし、焼けたら焼けたで構わない。
せっかくこんなにいい天気なんだ時間はたっぷりあるし、山をゆっくり下って行こう
舗装された道を一歩、一歩、空や太陽、鳥の声を楽しみながらゆっくりと歩く。
右にはずっと先まで続く学院の壁。左は森林が広がっている
こうして学院を外から見ると、改めて凄いなぁって思う
この赤レンガで出来た壁は、決して飛び越える事が出来ない、ベルリンの壁。
学院内には花や木が壁の側に植えられていて、余り気にしなかったけれど、改めて外からこの高い壁を見ると、息苦しくなる
本当に収容所みたい……
「ふぅ」
深呼吸で息を整えて、
「よし!」
沈んでいても、仕方が無い。元気に行こう!