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お姉様の休日 2

土曜日。外出許可の日


軽いメークを終わらせた僕は、薄い水色のワンピースに着替える


「えっと、お財布に生徒手帳に外出許可書。それと……」


会社のIDカード


これこそが今回の外出理由となる


先日寮に来た佐久間さんの話し方から察すると、魔女の鉄槌は夕凪の予想通り、千鶴さんに付いているようだ


それは良い。三条院は凄いお金持ちだし、現社長の長女である千鶴に厳重なガードを付ける気持ちも判る


ただ……


「……納得できない」


魔女の鉄槌には手を出すな。例え千鶴さんに何かをしたとしても……


それじゃ僕らが千鶴さんのガードしている意味が無いじゃないか!


会社は何かを隠している


勿論、僕のような下っ端に全部の事情を話す義理も必要も何も無いのだけれど……


「…………行こう」


鏡の前に映る僕では無い僕にそう言って、僕は部屋のドアを開けた




「それじゃ、行って来ます」


夕凪と千鶴さんの部屋へ行き、出発の挨拶。


「行ってらっしゃい、美里。今日は日差しが強いです、日射病には気をつけて下さいね」


「はい。千鶴さん、麦藁帽子をありがとう」


先程千鶴さんが貸してくれた、黄色リボンが可愛い麦藁帽子をすっぽり被る


「…………本当に可愛いわよね、美里って」


呆れた様に言いながら夕凪は、僕を上から下まで見てため息を漏らす


「……ありがとう」


僕もそれしか言えなかった


「夕凪、後はお願いね」


「あいよ。お土産よろしく〜」


「はい。じゃ、行って来ます!」


「行ってらっしゃい」

「行ってらっは〜い」


二人に手を振り、僕は一ヶ月半ぶりとなる学院の外を目指して歩き出した



「あ、お出かけですか外にお姉様?」


寮を出ると、新井さんが掃き掃除をしていた


「はい、外出許可が下りましたので。新井さんはお掃除ですか? ご苦労様」


「い、いえ。ただの当番ですからそんな……」


寮の掃除は新入生がやる最初の仕事であり、一年間ずっとやらなくてはいけない大切な仕事。

 以前、僕が一年生の掃除を手伝った時、先生に余計な事をしてはいけないと、怒られてしまった事がある


「いつも寮が綺麗なのは貴女達一年生が毎日お掃除をしていてくれるからです。ありがとう」


「い、いえ! こ、こ、こちらこそです〜」


新井さんはペコペコと頭を下げる。

 気を遣わせてしまったみたいだ、ごめんね


「何か欲しい物はありますか? チェックに通りそうな物でしたら購入してきます」


「そ、そんな!? お姉様にそんなお手間をお掛けする訳には!」


「手間なんかじゃ無いですよ。お買い物するのは好きですし」


遠慮しないで。そんな気持ちを込めて微笑む


「あ……そ、それじゃ……ほ、欲しかった漫画があったのですが……」


「はい」


「ブ、ブッチャー先生の【ガラスのお面】最新刊を!」


ブッチャー。世界には三人の有名なブッチャーがいる


一人はこの学院の創設者であるブッチャー・ザ・ドラドーラ。

 彼はアラブの石油王であり、希代の政治家でもあった


そしてもう一人のブッチャーがこの人。

 この間、この人が書いた【カマキリに水をかけるとヤバイよ】と言う漫画が、つまらないと言う理由で有害図書に指定されたばかりだ


「うん判った。僕も読んでたよ、ガラおめ」


「本当ですか!? 私、ガラおめの大ファンなんです! 特にひょっとこが姫が出て来る巻!」


「ああ、うん。二人のひょっとこ姫が出て来る巻だね。片方は元気でたくましいボーイッシュな姫様。もう片方は心が優しくて美しい姫」


途中で見なくなってしまったけど、まだ連載続いてたんだ


「はい〜。あ、でもあれは無いなって思ったのですが……」


「なにかな?」


「実は男だった」


「ぶっ!? ゴ、ゴホ、ゴホ!!」


「お、お姉様!? だ、大丈夫ですか!」


「う、うん、大丈夫。ごめんなさい、器官が弱くて」


「今、お水を持って来ます」


「あ、大丈夫です。それよりごめんなさい、お掃除の途中なのに時間を取らしてしまって」


「そ、そんな……謝らないで下さい。私、お姉様とお話出来てとっても嬉しかったです!」


「ありがとう。またガラスのお面のお話しましょう」


「はい!」

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