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アフタヌーンティーとお姉様

「お姉さま〜」


土曜日の午後、一人カフェで冷たいミルクティーを飲んでいた時、そんな声が青空の下で響いた


「うん?」


声の方を見ると、小さな体をめいいっぱい広げて手を振る女の子。

 その女の子は嬉しそうに僕の方へ駆け寄って来た


「はぁ、はぁ……こんにちは、お姉さま!」


「はい、こんにちは」


軽く微笑みながら誰なのかなと、失礼にならない様、注意しながら彼女の顔を見てみる


ねこっけのショートヘアに、クリクリとした大きな瞳。

 鼻や口は小ぶりだけれど、小さい顔に良く合っていて、とっても可愛い女の子だ。一度見たら忘れなさそうだけど……


「……お姉さま、先日はし訳ございませんでした。ボク、凄い暴走をしてしまって……」


先日?


「……あ、長峰さん?」


「はい、長峰です。髪を切ったからイメージ変わっちゃいました?」


長峰さんは僕にラブレターをくれた子だ。月曜日に僕を襲った子でもあるんだけど……


「髪もそうだけど、雰囲気がとても変わりましたね。眼鏡はコンタクトに?」


「はい、基本コンタクトなんです。眼鏡にするとちょっとだけ気が大きくなると言うか、人格が変わってしまって……」


気まずそうにそう言う長峰さん


「そ、そうなんだ」


長峰さんは少しって言うけれど、あの日と同じ女の子だとは、とても思えない……


「お姉さまには、どーしてももう一度謝りたかったです。本当に、本当にすみませんでした!!」


長峰さんは深く僕に頭を下げる


「僕はもう気にしてませんよ。それより、もし宜しければ一緒にお茶を楽しみませんか? 一人だったので、少し寂しかったんです」


「あ……は、はい! はい!!」


僅かな戸惑いと、それに勝るヒマワリのような明るい笑顔を見せ、長峰さんは何度も頷いた



「もうすぐ文化祭ですね」


長峰さんは僕と同じミルクティーを頼み、一口飲んだ後そう言った


「そうですね。この学院の文化祭はどういった物なのでしょう?」


楽しそうに話すクラスメート達との会話で、何と無くには理解しているけけど、具体的な形はまだ見えて来ない


「う〜ん。ボクも初めてなので良くは判らないんですけど、割と普通だと思います。出店を出したり討論会をしたり」


「なるほどね」


「フランスから有名なオペラ歌手を呼んだり、ロシアのバレエ団を招いたり、日本の首相を」


「ち、ちょっと待って。文化祭の事だよね?」


「え? は、はい、そうですけど……」


長峰さんは不安そうな顔で僕を見上げる


「あ、ごめんね。少し僕がイメージしていた物と違ったから」


お笑いの人を招いたりはしないだろうと思っていたけど……


「お話、続けて貰っても宜しいですか?」


「あ、は、はい! えっと……その中でメインはやっぱりリュミエールですね!」


「リュミエール?」


「はい! 全生徒の中から一人だけ最優秀模範生を選ぶ投票の発表が文化祭終了時にあるんです。最優秀模範生に選ばれた方はボクらの学院の光。ボクらが目指すべき憧れの存在なんです!

去年は千鶴さまが最有力候補だったんですが、辞退してしまって、次に有力だった綾菜さまが選ばれました」


キラキラと輝くような瞳でリュミエールを語る長峰さん


リュミエールと言う存在が、この学院においてとても大切な物だという事が伝わった


「……ふふ。長峰さんもリュミエールを目指している訳ですね?」


「いぃ!? ボ、ボクなんかがそんな! ボクなんかじゃ候補にすらなれません!!」


「自分を被虐するのは駄目ですよ。長峰さんはとても可愛らしいし、明るくて素敵な子だと思います」


「そ、そんな、ボ、ボクなんか……あうっ」


また被虐的な事を言ってしまいそうな長峰さんのほっぺを軽くつねる


「貴女を見ていると何だか元気が出てきます。まるでお日様の様……リュミエールの名に負けているとは思いませんよ、長峰さん」


「あ……う……あ、ありがとうございます、お姉さま!!」


ちょっとだけ泣いてしまいそうな顔。だけれど、元気良く笑顔で頷いた長峰さん


「……リュミエールか」


きっとこういう笑顔が出来る子が、なるのに相応しいんだろうなと何と無く思った



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