お姉様達のお食事会 3
「さて、と」
夕凪達の部屋にあるキッチン。洗面台には白いまな板と様々な食材、そしてカップラーメン
「始めようか」
「始めるったって……何をさ?」
花柄の可愛いエプロンをした夕凪が、訝しげな顔で僕を見つめた
「料理だよ。いくらなんでもカップラーメンにお湯を入れて出すだけじゃ酷いでしょ?」
そう言いながら髪を縛って、僕もエプロンをする
「……う〜ん。思わず嫁にしたくなるぐらい似合ってるわね」
「……君、段々佐久間さんに似てきたね」
「…………マジ?」
「うん」
「酷い……酷いわ!」
盛大に泣き始めた夕凪を無視し、まな板に白菜や人参等の野菜を並べる
白菜や椎茸は手でちぎって、人参は包丁で千切り
「カボチャと大根も入れようかな? 夕凪、カボチャ取って」
「はいよ」
「ありがと」
取ってもらったカボチャや大根を薄くいちょう切りにし、茹でる
「それじゃスープを作ろうかな。夕凪、カップラーメンのスープを頂戴」
「はい、はい」
ベースはあくまでもカップラーメンだ。余り味を変えないよう、上手く改良しなくては
「……さよなら、あたしの1.5倍トンコツラーメンちゃん」
まるで愛した恋人に別れを告げるかの表情で、夕凪はカップラーメンを開てスープを取り出した
「…………今度外出許可が出来た時、沢山買ってあげるから」
「うん……きっとよ?」
涙ぐむ夕凪に微笑みを返して、僕はしっかり頷いた
「さて、スープ」
味をなるべく残しつつ、人数分行き届く様にしなくてはならない
「…………う〜ん」
しょうゆ、塩、砂糖と言った調味料を最初に入れてしまうと、その味が強くなってしまう
「先ずは野菜で水分を出して、お肉や魚でダシを取ってみようか」
水を多めに入れたカップラーメンのスープに、豚肉、魚のアラ、鳥の手羽を沈め、コトコトと数十分煮込む
「アクとお肉を掬って、一つまみお塩を入れて野菜を……」
「……ねぇ、美里?」
「何?」
「もうそれカップラーメンじゃ無いわ……」
「…………そうだね」
何処で間違えたんだろ?
「最初からじゃない?」
僕の心を読んだのか、夕凪はそう言ってため息をついた
「と、とにかくスープは完成! 後は麺を茹でて仕上げるよ!!」
「はいはい」
もう後戻りは出来ないのだ!
――――――。
「か、完成?」
そして出来たラーメン。それはラーメンと言うより……
「豚汁?」
「ラーメン!」
トンコツ味の豚汁だなんて僕は認めない!
「…………いや、良いのよ。美里は頑張ったわ」
「優しくしないで〜」
泣きたくなってしまう
「……さ、行きましょう美里。大丈夫、お姉さんだけは美里の味方よ」
「そ、そんなに酷いかな?」
ラーメンかどうかはともかく、結構美味しいと思うけど……
「あ〜ほら! いつまでも固まって無いでさっさと行くわよ!」
「……ん」
千鶴さん、ガッカリするだろうな……