星の銀貨(もうひとつの昔話 36)
両親を亡くした少女がおりました。
少女はとても貧しく、住む部屋も寝るベッドもなくなり、残っているのはわずかなパンと着ている服だけになりました。
だれも助けてくれる者はいませんでしたが、それでも少女はたいそう信心深かかったので、神さまの力をすがって家を出ました。
野原に出ますと、少女は男に声をかけられました。
男が言います。
「なにか食べるものをください。とてもおなかがすいているのです」
「あなたに神様のめぐみがありますように」
少女は祈り、なけなしのパンをあげました。
さらに歩いていますと、次は女の子に声をかけられました。
女の子が言います。
「頭がとても冷たいのです。なにか頭をおおうものをください」
「あなたに神様のめぐみがありますように」
少女は頭巾をぬいで女の子にあげました。
さらに進んでいますと、寒さで凍えている男の子に出会いました。
「あなたに神様のめぐみがありますように」
少女は上着をぬいで男の子にあげました。
さらに歩き進んでいますと、スカートが欲しいという子供に出会いました。
「あなたに神様のめぐみがありますように」
少女はスカートをぬいで子供にあげました。
少女は森にたどり着きました。
あたりは真っ暗です。
と、そこへ。
一人の子供があらわれました。
子供が言います。
「パンツが欲しいの」
少女はちょっと迷いましたが、真っ暗なのでだれにも見られやしないと思いました。
「いいわ」
少女はパンツをぬいで、その子にあげました。
「これ、いらない」
子供がパンツを突き返してきます。
「どうして?」
「だって、ウンコがついてるもの」
「えっ!」
見ると、ほんとにウンコがこびりついていました。
少女は恥ずかしさとショックのあまり、しばらく茫然としていました。
少女が我に返ったとき、そこに子供の姿はありませんでした。
と、そのときです。
空高くから、白銀色のパンツがパラパラと降ってきました。
何枚も何枚も舞い落ちてきます。
少女が拾い集めると、そこには数百枚のパンツがありました。
それからの少女。
町に出るとおじさんたちに声をかけ、
「ねえ、このパンツ買わない? 若い娘がはいてたパンツなんだけど」
そう偽って、拾ったパンツを売りつけました。
パンツは飛ぶように売れ、少女は星の数ほどの銀貨を手に入れたのでした。