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遥か遠くの星と月  作者: 夜月唯夏
6/11

星と月はまだ遠い5


「(え、うそ、なんで)」

視線の先には昨日学校で見たばかりの人物がいた。

星望と同じ濡れ羽織のような黒い髪に紫の瞳。

「…叶月…」

自然と声に出していた。自然と足がそちらに向かおうとしていた。自然と目が離せずにいた。

10年。10年も求めた人物が確かにそこにいた。昨日学校で見た時とは違う。ありのままの姿でありのままの自分で最愛の弟に会える。

もう少しで叶月の視界に入る―――――――


「セイラ!どこに行くんだ」


現実に戻された瞬間だった。完全に存在を忘れていた。今何故自分がここにいるのかも完全に忘れていた。

はっと気づき、孝臣の顔を見る。


「あ、ごめんなさい。少し知り合いに似た人がいたので…」

「まったく、今は俺のセイラだろう?よそ見はしないでくれ」

「はい、ごめんなさい」


星望が申し訳なさそうに微笑むと気を良くしたのか満足気な顔をしていた。孝臣の手が再び腰に回り連れていかれる。振り向いてもう一度、弟の姿を目に焼きつける。学校にいる時もかっこいいけど、それよりも何倍もかっこよかった。

気づいて欲しい。あの視界に入りたい。その思いがどんどん募っていく。今すぐこの腕を振り払って彼に話しかけたい。自分はここに居るのだと知って欲しい。そう思うけれど、それは出来ない。陽のあたる場所にいる彼と顔を合わせてはいけない。万が一彼に何かあった時絶対に後悔する。自分はバレてはいけないんだ。そう改めて強く心に言い聞かせた。

叶月のことで頭が一杯だった彼女は、何故彼がここに居るのかを考えることをしなかった。ただの高校生であるはずの弟が何故ここに居るのか。


―――――――――――――――――――


セイラ!


そう聞こえた気がした。幻聴かと思ったが、そこまで多くない名前だろう。だとしたらどこにいる…?

声が聞こえた方を見てもそれらしき人物はいない。10年で見た目も変わってしまっているかもしれない。しかし、見た目とかの問題ではないのだ。彼と彼女はお互いを自分だと感じている。感覚として、そこにいればわかると確信している。今呼ばれた名前は彼女のことだと思う。しかしそこには姿はない。やはり、自分の聞き間違いなのか。


もしいるのなら、一目でいいから見たい。死んだとは思わない。死んだら絶対にわかる。絆を超えた何かが自分と彼女を繋いでいるから。そうは思っていてもやはり彼女が生きていることをこの目で確認したい。

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