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遥か遠くの星と月  作者: 夜月唯夏
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星と月はまだ遠い4


「おお!セイラ!今日も美人だな」

そう言ってすぐ腰に手を回してくるのは何故なのか。叩き落としたいのを必死に堪え笑顔を作る。

「今日も呼んでいただき嬉しいです」

「そうかそうか!私も君に会えて嬉しいよ。君といると皆が私を羨ましそうに見るんだ」

「それは私ではなく、孝臣さんが魅力的だからですよ」


お世辞を言うのにより一層必死で笑顔を維持する。絶対に明日は表情筋が筋肉痛になると確信した。更に回された手が腰を撫でている。不快感を感じる度に任務任務…と心の中で唱える。


芹澤孝臣。日本の政治にも大きな影響を与えるほどの権力を持つ男。しかしそれは表の顔で、裏ではそれ以上に有名だ。それゆえ、裏では随分と畏れられている。そんな彼は、パーティが行われる度に星望を呼ぶ。依頼となると依頼料として組織に安くない金が支払われている。それが星望ならば尚更である。それを何度もしているのだから男の財産の底が知れない。

「君は嬉しいことを言ってくれるね。今日も楽しませてくれよ」

「はい、もちろんです」

うん、殴りたい。そう思うと同時に手が出そうになった。何が悲しくて可愛い可愛い大事な弟じゃなくてこんなオッサンの相手をしなければならないんだ。弟に会える学校を休んでまでこんな男の相手をしなければならないなんて、最悪以外の何と言えばいいか。星望が男にバレないようにため息を吐いた時、ふと視界に(ひと)が入ってきた。


「え…?」




―――――――――――――――――――


「おいおい、叶月どこ行った!?」

オレンジに近い茶髪が走り回っている。

「友也、行儀悪い」

ダークグレーのスーツで、いつもよりも少しセットされた髪型の神代叶月は呆れた顔で茶髪を見た。

「お前な、遊びに来てるわけじゃないんだよ。頼むから集中してくれ。それにしてもよく食うなー」

叶月の横にある皿の山を見て若干呆れながら友也は言った。

「わかってる、ごめん。ここのご飯美味いよ」

綺麗な顔が心底申し訳ない顔をしたから友也は許した。それが演技だとは知らずに。その証拠に、叶月はすぐに興味を失ったように再び食事をし始めた。

「で、どうなの?」

「あぁ、それがな、やっぱり非合法なやつが出回るっぽいんだ」

「ふーん、じゃあ、それを止めればいいんだな」

「いや、そうじゃない」

「今回の俺達の役割は、証拠を得ることだ。殲滅は今回じゃない」

「随分回りくどいな」

てっきり殲滅が自分の仕事だと思っていたから拍子抜けだった。驚きと共にそんな回りくどいことをするのに純粋に疑問を抱いた。

「…あいつらが関わってるかもしれない」

そう聞いて叶月は動揺を隠せなかった。

「…"イルシオン"か」

友也が無言で頷く。

マジか…と漏らしながら天を仰ぐ。しかしすぐに何かを思い出したように紫の瞳が強く輝いた。

「今回は止めるからな」

「…今回は大人しくしてやってもいいけど」

「そう言って毎回暴走してるのはどこの誰だよ。」

「仕方ないだろ。あいつらのことを潰したいんだ」

「……まぁそういうことだから。それだけは言っておく」

叶月の思いを知っているからこそ今回は我慢をして欲しかった。友也は叶月の肩に軽く手を置いて、それから立ち去った。

残された叶月はそれを黙って見ていたが頭の中は1つに占められていた。


イルシオン…"ilusión"

手段を選ばない何でも屋のような組織。どこに拠点を置いているかさえもわからない、その名の通り幻影のようなものである。


「(絶対潰す。俺の星も返してもらう)」


覚悟を決めた紫月(むらさき)は爛々と輝いていた。

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