4話
「で、なぜこうなった・・・」
それは遡ること数分前、やっとのことで俺は狼みたいな奴をみつけて、テイムの魔法をかけ、無事に仲間にすることに成功したのだが。そのあと俺が回復したらこの通り。ちっちゃな豆芝のようになってしまった。これはこれで可愛いのだが、あんまり強そうじゃなくて・・・
「あ、お帰りなさ━━━いませ。あっ!タケルさんテイムしたんですね」
流石女性。可愛くなってしまった狼みたいな奴をみたとたん駆け寄ってきて撫でている。
「かわいいですね~少しだけ抱っこしてもいいですか」
「構いませんよ。どうぞどうぞ」
俺が許可を出すとすぐさま抱き上げて頬擦りを始める。なんとなくだが嫌そうにしている気がするが、まぁ気のせいということにしておこう。可愛いことには間違えないのでしょうがないんだ。そう、可愛いのがいけない。可愛いのがいけない。
「ふぅぁぁ、ありがどうございました。そういえばこの子の名前何て言うんですか?」
そういえば、この狼もどき名前をつけてやってなかった。ん~どうしようか、名付けるのって難しいんだな、まぁここは適当に。
「じゃあ、ポチで」
「ポチってあんたそれ犬の名前じゃないの」
こっちの世界でも犬はポチというのが定番のようだ。ここに来てまだ数日だが日本と似かよっている部分が結構あるようだ。
「ポチちゃんですね!じゃあ、ポチちゃんにはまた遊んでもらうとして、金魚の依頼の報酬、十三万ゼノです」
俺達は昨日と同様に今日もギルドにある酒場に行く。今日の報酬は一匹一万ゼノと分かりやすいから分配も簡単だ。俺が六匹倒したから六万、カインは七匹だかは七万だ。
「もうっ!なんで遊んでたタケルと真面目にやった私で一匹しか違わないのよ!」
「んなっ!?別に俺は遊んでたのではないぞ!ただ気持ちよかったから何度か捕食プレイを楽しんだだけだ」
「それを遊んでたっていうの!罰として今日の酒代は割り勘だからね」
「わかったよ。で、明日はどうする?」
「ちょ、気分よく飲んでたのに今から明日の話なんかしないでよ。お金はあるんだから明日は休むことにするわ。そんなに毎日毎日やってらんないわよ」
そんなにまだ働いてない気がするが・・・
「まあ、休養も大事・・・か」
と、言うことで明日はお休みだ。時間はある、金もある。なら異世界観光とでもいきますか。そうと決まれば今日は帰って休むことにする。
俺はポチを連れてカインに先に帰る事を伝えて宿に戻る。宿に着くと俺は二冊のなにも書いていない真っ白な本を取り出した。これは今日依頼を受ける前に買っておいたもので、一冊は日記用、もう一冊は討伐したモンスターを記録する用だ。手早く日記を書き終えるとポチと一緒にベッドに潜り込んだ。ポチの毛が気持ちいい。今日はいつもよりよく寝られそうだ。
朝、起きると俺は朝食も取らずに宿を出た。今日は屋台か何かで済まそうと思う。
朝の町は特に活気がよく思える。色々な場所で呼び込みや宣伝の声が聞こえる。どこからかは美味しそうな匂いまで漂ってきて俺の腹の虫もうるさくなっていた。
「そこの兄ちゃんくはじはどうだ、脂がのってうまいぞ」
「じゃあ、一本もらうよ」
「あいよ、十ゼノな」
俺は店主からくはじというやつを受けとると近くにあったベンチに腰かける。このくはじというやつ、なかなかに一本が大きい。蒲焼きのような見た目だ。一口大きな口でかぶりついた。
「ん!?」
あまりの美味しさに思わず声が出てしまった。これはうなぎの蒲焼きそのものだった。しかもよくタレが絡んでいて美味しい。日本では高級品だったうなぎだが、こちらではなんと十ゼノ。普通の人の一日の生活費がだいたい二百ゼノ程なので相当安い。
ヤバい、これはもっと食わねば!
「おっ!さっきの兄ちゃん。どうした、また買うか?」
「ああ、三十本程頼む」
「おっ!よく食うな、沢山食べるのはいいことだ。だが金はあるのか?」
先に三十本分、三百ゼノを出してみせる。
「おお、おっしゃ。じゃあこれはおまけだ。また宜しくな」
俺は買った三十本とおまけの一本をもってベンチへ戻る。それにしてもうまい!これはお米が欲しくなる味だ。しかしこの世界でまだ米はみたことがない。
後で探してみるか
沢山のうなぎ擬き、くはじを食べ終えるとまた観光を再開する。
ヤバい・・・食べすぎた、くるぴぃ。
あれから観光をしようとしたのだが目に写る屋台の料理が美味しそうでつい。結果的にくはじ三十二本とティルム丼というカツ丼のようなもの三杯、べべ汁というだご汁のようなもの十杯も食べてしまった。ちなみにお米は見つからなかったが麦飯が見つかった。それにしてもこの街には食べ物しかないのだろうか、観光名所のような場所が一向に見当たらない。
これは誰かに聞いてみるべきか。
俺は最初に行ったくはじを売ってる屋台に戻ってみた。
「なんだ兄ちゃんまた来たのか」
「ん、ちょっとこの街の名物みたいな場所を教えてもらえないか」
「ん~名物みたいな場所か、見ての通りここには屋台とギルドくらいしかないからな。強いていうならテヌフ神殿くらいじゃないか」
「ありがとう、じゃあそこにいってみるよ」
おじさんに教えられた通りに進むと彫刻が施された立派な神殿が見えてきた。
確かにこれは凄いなな・・・
とりあえず中に入ってみると一人の修道女いや、巫女か?がいたので声をかけてみる。そもそもここは誰を祀っているのか知らないしな。
「すみません。少しいいですか」
「はい、どうされましたか」
そうやって振り向いた彼女は驚くほど美人だった。少し茶色っぽい黒髪を腰まで伸ばしており、服の上からでも解るほど胸が大きく、腰回りは細く過ぎずちょうどいい。そして何よりも足、足がめっちゃ細く長いのだ。
あぁあの足に踏まれたらどんなに気持ちいいんだろうか━━━━━
「ここではどのような神様を祀っておられるのですか」
「こちらでは女神テディメニス様を祀っております。テディメニス様は優しく慈悲深い方ですのでもし信仰している方がおられなければテディメニス様を信仰するといいでしょう」
「そうですか、ありがとうございます。ではここは一つご挨拶だけさせていただきますがよろしいでしょうか」
「もちろん。どうぞお願いします」
俺は一言断ると礼拝堂へ行き一応挨拶をする。もと日本人という事で一応どのような神様でも挨拶はする。あの自称神意外にはね・・・
目をつむり両手を胸元で握る。一言心の中で挨拶を済ませると目をあける。
「へぇ?」
思わず変な声が出てしまった。そこはさっきまでいた礼拝堂ではなかった。しかし俺の知っている。忘れもしない場所だ。辺り一面を白い光が覆っている。そう━━━━━━
「はい、は~い。どちら様ですか━━━━ゲッ!何であんたがここにいんの!?」
「はっ!俺だってそんなことは知らねぇよ。俺はテディメニス様に挨拶をしただけだ」
「はぃ?私に?いや、ないない。ないわ、マジキモいからやめて」
「誰もお前には━━━━━━え?マジで?いやないないない。あり得ない。嘘だろ、だって優しくて慈悲深いはず。お前とはあまりにもかけ離れて━━━」
そこまで言うとまたあのときと同じように足のしたに穴がうまれ落ちてしまう。
「ちなみに私が優しくて慈悲深いテディメニス様だ!二度と来るなよキモ男」