第八話 《最初で最後の……》1
「ひどいじゃないか~、ちょっと悪いことしたくらいで殺すなんて~、お前も人殺しなんだからこっちに来いよ~一緒にあの世へ行こうぜ~」
そして、複数の手が足に掴みつき地面の中へと引きずり込もうとする。
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「ハッ!……また、嫌な夢だ」
自らの手でトリガーを引いたあの日からすでに三日が過ぎた。智也はいまだに悪夢に毎晩うなされている。
隣においてある時計を見るとまだ4時30分、もう一度寝ようとしベットに倒れる、だが、眠れない、目がなんだかすごく乾燥しているような感じがする。眠いのに眠れない、イライラがこみあげてくる。思いっきり身を丸めて、布団を顔までかぶせる。
なんとか寝ようとしていたが、どうしても寝れずに7時になっていた。
小声:「お兄ちゃん~」
いつも元気に起こしてくる妹は、近頃の兄の異変に少し気になっていたようで、よく眠れないことにも気づいていたようだ。そんな兄がもし寝ていたらっと気遣い、こっそりとドアを開けて入ってくる。
その時智也はすでにあきらめて、高校の制服に着替えてる最中だった。
「アッ……」
「? そんなジーと兄の着替えシーンを見るなよ、恥ずかしいだろ」
「お邪魔しました~」
覗き込んでいた姿勢のままそ~と扉と目線の高さが変わらないまま扉を閉じていく
「どうしたんだ? あいつ」
着替えを済ませ、階段を下りていく。
パンにウインナーに卵焼きという一般的な朝食を済ませ、二人でまた登校していく。
妹はまたいつものように腕に抱き着いてきたが、寝不足のせいかいつものような会話ができない。
「おはよう~! 明美~!」
「ああちゃん! おはよ~! じゃっ、お兄ちゃん、先に行ってるね。お兄ちゃん? 聞こえてる?」
「? あぁ、行ってきな」
「お兄ちゃん」
「……? どうした?」
「……何でもない、じゃね。今晩は早めに帰ってきてね。私が最近元気ないお兄ちゃんに手料理をふるまってあげる」
なるべくいつものように元気な返事を返す
「おう! 楽しみにしとくよ」
「お前ら新婚かっ! なんともうらやましい! 俺も妹に“あ~ん”とかしてほしい!!」
こいつにかまう気力はないな
無視して校門を通ろうとするも、
「おいおい~、無視すんなよ~」
秀吉に手首をつかまれた瞬間、悪夢が再び脳裏を横切り
「う~わ!」
思わず大声を出し、思いっきりつかまれた手首を勢い強く振りほどく、驚いた秀吉も後ろへとしりもちをついてしまう。
そんな様子を周りの学生たちが変な人を見る目で見てくる。
周りを見回し、目が合うとみんな目をそらす。最後に驚いた顔の秀吉を見下ろす。
「……ごめん」
そう言って教室へと向かった。
自分の席に静かに座り、うつぶせになる。
周りがいつもよりざわついているのが音でわかる。
「みんな静かに~、智也、聞こえているだろ、放課後職員室に来い。それではホームルームを始めるぞ~」
社会という時計は何か一つの人が欠けたところで停まったりせず、そのパーツのことも有名人なら教科書に残り、特に目立つことなく人生を送ってきた人は、いつしかどの記録にも、誰の記憶にも残らなくなる。
智也は授業を真面目に聞きながらも、少しうたたねをしてしまう。何せここ三日間は毎日実質4時間ほどしか眠れていない。
そんな体調で、精神が長く続くわけがなかった。
智也はついに授業中に倒れてしまい、保健室へとクラスのほかの男子一人と秀吉の二人で担がれていった。
保健室で目を覚ますと明美が心配そうに智也を見ていた。
「……明美、ここは……」
「保健室だよ。お兄ちゃん授業中に倒れたんだよ? 最近本当にどうしちゃったの? 何だかあの人たちと知り合ってから何だか変だよ?」
「そんなことより、おまえ、授業は」
「今はお昼休み、それにお兄ちゃんが倒れたって聞いたら授業中でも飛び出してくるよ!」
「おいおい、授業はちゃんと受けなよ」
保健室の扉が開き、保険の先生が入ってきた。
少し具合がよくないから、今日はもう帰ったほうがいいわ。
「じゃ、先生、私がお兄ちゃんを家までしっかり送ります」
「それだと午後の最初の授業に間に合わなくなるわよ」
「午後の最初の授業は休みます!」
「そういう訳にはいきません。タクシー呼ぶから、今日はもうタクシーで帰りなさい」
「わかりました」
そう言って明美がしょんぼりとして、
「じゃね、今日は部活休んですぐに帰るから! 家で待っててね!」
「あぁ、ちゃんと待っとくよ」
数分後タクシーが来て、家に帰った。
自分のベットに倒れ、すぐに眠りについた。
端末が鳴り、一通のメールが届いていた。
《この世の真実を知りたくないか》
新編スタートです!
本日は遠くから見ていた理想郷で夢を見るを更新しますので、是非そちらも興味があれば読んでみてください
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