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第五十一話 小さな光

 生まれたときに、もともと体の弱い母を亡くした。

 海外出張が多かった父は、ある出張で仕事を終わらせイギリスからの帰りの飛行機の着陸前のバードストライクによるトラブルで父親をも失ってしまい。その父親の葬式に出ていたのが、今のお父さん、津田広志が親戚の誰も引き取りを申し出なかった中、一人突入し。

 

「私の命令で失った部下だ。その家族は私が責任をもって社会人になるよう立派に育て上げて見せます」


「うっ、う~ん。ですが、これは我々の家族の問題ですので。部外者のあなたが引き取るのは筋違いでなはいのでしょうか?」


「そうですね。では皆さんの目の前に座っているそちらの少女の涙をふき取ることさえせず。ましてや涙を増やしているようにしかうかがえませんが。私こそが立派に育て上げて見せる! っという方がいらっしゃるのなら今すぐにその手を挙げていただければ、私はすぐにこの部屋から立ち去りましょう」


 そう言われ、親族の方々は、ただ互いに目を合わせ。ただ無言で押し付け合う。

 そんな大人たちを見て、まだ幼かった明美の心は真っ暗な箱の中に閉じ込められた。だが、そこにはあまりにも眩しい光が少女の箱の中、そして、大きく力強い手が、箱の中にいる少女を無理やり明るい世界へと連れ出した。


――――――――――――――――――――


 結局どの親戚も大体一般的なサラリーマンで子供もいる。そんな中さらに子供を一人増やすのは、一般家庭的にかなり負担になる。それは我が家にとってはそれほどの負担ではない。だが、人間というのは疑い深い生き物で

 智也の母、津田茜は明美が広志の隠し子だと疑い始め。それから二人の距離はどんどん離れ、やがて父はあまり家に帰ってこなくなった。それでも毎週一度は必ず家に帰ってきて。自ら明美と智也に勉強を教えていた。もちろん遊びにも連れ出している。だが


「なんで僕のうちに来たんだよ! 妹なんていらないから優しかったお父さんとお母さんを返して!」


 そう泣きながら、まだ幼かった智也は明美の首をそのまだ小さい両手で絞める。明美が来るまで、津田家は広志が忙しくて、姿を現すのが少ないという点以外は幸せな毎日を送っていた。


「ごめん、なさ、い、ごめっ、な、い」


 謝りながら涙を流し、永遠の眠りを受け入れようとした明美を見て、智也は無抵抗な明美に対する罪悪感に満たされ。手を緩めた。


「ごめんね」


 そう謝り、智也はしばらく自分の部屋に閉じこもった。


――――――――――――――――――――


 そんな日が続いたある日。扉が開き、そして閉じる音がした。智也が窓の外を見ると。明美がどこかへと走り去っていくのが見えた。自分が悪いことをしたっというのは五歳もあればわかるはずだった。


「おい、見ろよあの子、ちょうどいいんじゃね? ああいうまだ乳臭そうな女の子が好きな変態に売れば高値で買ってくれるぜ~」


「ねえ、君~。こんな時間にお外で歩いてたら危ないよ~」


「お兄さんたちと一緒におまわりさんのところに行きましょうね~」


 そう言って明美の手をヤンキーの二人組が引っ張る。だが、その時、


「うわ~!!!!」


 そう叫びながら両手をプロペラのようにぶんぶん回しながら突っ込んでくる少年の姿が目に映った。


「なんだ? このガキ、どっかいッてろ」


 蹴られ、転び、再び立ち上がる。何度繰り返したか。ヤンキーはその少年に対し苛立ち。倒れた少年のおなかに数発蹴りを入れた。そして、少年が再び立ち上がることはなかった。だが、少年から大音量で防犯ブザーの音が鳴った。

 それを聞いたヤンキーたちはすぐに逃げ出した。

 立ち上がる体力すらなくした少年は、指の力だけで、ズボンにかかっていた防犯ブザーのひもを引き抜いたのだった。

次回は18日の予定です!

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