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Last Assassin ~偽りから作られた未来~  作者: †リオ†
第三章 ガラスのハートをした死神
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第四十九話 幸せな人生が訪れますように

 日々は泥水のように過ぎていき、一か月まであと二日になった。そんなある日、いつものように部屋に入ると、クイーンから何やら紙のようなものを渡され。それを見た後、そっと、ポケットに入っている財布の中に、無言でしまった。


「何、が、てた?」


「? 何が書いているのか? っていう意味か?」


 うなずいた。ゲームで打ち解けたように見えたが、やはり一晩経つと警戒が残る。だが、あれからだいぶ時間がたち、すっかり警戒されなくなった。


――――――――――――――――――――


「あれは本気か」


「……」


「そうか、わかった」


――――――――――――――――――――


「外、出たいか?」


 そう聞くとクイーンは空を見上げ、大空を羽ばたいている鳥を目で追い。少しだけ、涙を流した。よし、わかった。


――――――――――――――――――――


 いつものように二人でともにゲームを遊んでいた。だが、急に画面が真っ黒になった。いや、画面だけじゃなく。いつもより、星がきれいに見える。


「クイーン、見てみなよ、これが、天の川だ」


 そのあとすぐに電気は復旧し輝く星の川は徐々にその姿を暗闇の中に隠した。突如、研究所内のどこかで爆発が起こり、再びあたりは真っ暗、研究所が少しずつ赤く照らされ始めた。


「大丈夫だ、怖がらないで。俺が、守るから。とりあえず逃げるよ」


 ひとまず下のほうへと向かい、ほかの警備(軍から派遣され何も知らされていない者たち)と合流できた。そう、合流できたと思えた。だが


「ヴヴヴヴ~」


 その声を聴いたとたん、智也はその目の前にいる警備の首を逆方向へとひねった。そう、目の前にいるこいつらは、もう人間ではない


「走るぞ!」


 クイーンの手を引っ張り、逃げる。狙われているのは、たぶん俺一人だ。

 資料で読んだ内容が正しいなら、今連れているこのクイーンという少女は襲われたりしない。ただ、磁石のようにゾンビたちを引き寄せる。

 なぜこの女の子がクイーンと呼ばれているのか、それは、女王蜂を意味する。

 武器倉庫に到着し、そこですでに戦っている警備とともに襲い来るゾンビたちを予め一定数まで減らしていく。


「ここはいいからお前さんはクイーンを安全なところに連れていってくれ」


――――――――――――――――――――


「ここまでは順調っと、クイン、ここから先はひとりで走って行ってくれ」


 そう言うと、クイーンはなんだか寂しそうで、弱弱しく、こちらを見上げてきた。言いたいことはわかっているだが。


「ここから先は君と君を思う人と一緒に生きていけ、走れ! そして、振り向くな。 いけ!」


 言われるがまま、走りだす少女、遠く離れ始めた二人の間を、爆発とがれきが二人を完全に切り離した。


「幸せになれよ。さーて、残りの仕事ゾンビを片付けるか」


 中のゾンビたちを、最後の一体まで殺しつくす。それが、今やるべきこと。そして最後は


「これで良し」


――――――――――――――――――――


「おお、お前まだ生き残ってたのか! もうすぐ救助ヘリが来るそうだ! あと少しだ。踏ん張れ」


「おう! 任せとけ!」


 そしてほぼ完全に火の海と化した研究所の上空に救助ヘリがきて、ロープを垂らした。警備に紛れて、ヘリに乗り込んだ智也だったが。


「なんで、まだあんなところに」


 あたりはもうすでに人がいると危ないレベル、なのに、なぜだ、クイーンはもう外にいるはずなのに。どうする、助けに行くか、それとも……


「フッ、そんなこと、決まってるじゃん、もうあんな思いはしたくない」


「? どうした?」


「すみません、少し、忘れ物をしました」


 そう言ってすでに飛んでいるヘリの扉を開け、ロープを下のほうに投げた


「おい! 何を考えてやがる! さっさと扉を閉めろ! あぶね~だろうが!」


「すみません、自分が下りた後に閉めてください、お手数かけます」


「おい、待て、お前何考えている! 下はもう火の海だぞ!」


「忘れ物を、取りに行くだけさ」


 投げた縄をターザンのように使い、わずか二メートルしかない監視台の上に着地した。


「さっき見かけたところだと。この真下か」


 急いで階段を駆け下り、そして、


「いない」


 さっきまでいた二人の姿が見えなかった


“こっち、だよ”


 そう、頭の中で声が響いた気がした。声に、言われた方に行くと

 そこにはまだゾンビの群れが少しだけいた。そいつらを倒すと


「智也くん!」


「何やってんだよ、もう逃げたんじゃなかったのか!」


「それが、さっきのゾンビたちに襲われそうになって」


「それはもういい、あっちの道はもう通れない」


 出口まで、あとわずかなところまで走ったのだが、


「あっ」


 クイーンがつまづき倒れてしまう。だが、運の悪いことにコンクリートが崩れてきた。

 その瞬間、さっきまで倒していたはずの二体のゾンビが、クイーンを突き飛ばした。

 その指にはめているものを見て、クイーンが涙を流し


「ありがとう、パパ、ママ」


 そして、無事に研究所から抜け出した。


「ありがとうね、智也くん、わざわざ助けに来てくれて。あれ? 智也くん?」


 そこには、一人の少女の人生を救った少年の姿はもうなかった。

 後日、がれきの中で白い服を着た少女と白衣を着た金髪女性、並びにアジア系の少年の遺体が見つかったという。

次回は10日に更新する予定です!!

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