第四十八話 普通の、女の子
滞在中
「クイーンのそばにさえいれば、緊急時以外は何をしていてもかまわない」
「と、言われてもな~」
音楽プレイヤーと“あの端末”あとは着替えのための服しかカバンの中には入っていない。
「そうですね、そこのテレビは日本のチャンネルも見れますので見たい番組があるのでしたら見ていただいて構いませんよ。あとは」
そう言ってテレビの下にある引き出しを引いた。そしてそこに現れたのは銀さんの家ほどそろってはいないが、テレビにつなげるタイプのゲーム機が大量に出てきた。
「これらはすべて自由に遊んでいただいて構いませんよ」
「でも、あの子がまた怖がるんじゃないのか?」
「構いませんよ、クイーンの精神状況は常に観察しておりますのでご自由におくつろぎください。もちろん、くつろいでいても給料はお渡ししますので」
それだけ、常に身の危険が伴うっという事なのだろう。クイーンは脳まで犯されていないにしても、その肉体はすでに人間のものではなくなっている。悪気がないとしても、間違って引っかかれたり、かみつかれたりするだけで感染する恐れがある。
「まあ、やることもないし、え~と? マ〇オ〇ート? アサシ〇クリー〇、ニー〇フォー〇○○〇」
クイーンのほうに視線を向けるだけで
ほら、怖がった
「なんか近くにいても全然よってこないし、話しかけても逃げちゃうし、ヘッドフォンでも付けてあそんどこ」
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あれ? 外がもう暗い、どれだけ遊んでたんだろう。すぐそばでべっとのきしむ音がした。一瞬びっくりし、距離をとったが、そこにいたのは興味津々に画面を見つめているクイーンだった。
「遊んで、みたいのか?」
コントローラーを差し出してみるが、すぐに怖がって一瞬距離をとるが、再び興味深そうにコントローラーと画面の中のキャラクターを交互に見つめ、そしてコントローラーに手を付けた。
「おや、君以外に“あれ”が心を開いたのはいつぶりでしょうかね」
「あの子はちゃんと生きているれっきとした人間です」
「余計な事考えないで、君は自分の仕事だけすればいい」
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「すっかりはまっちゃってるな~」
コントローラーのどのボタンに中のキャラクターがどのように動作しているのかはすぐに理解できているから。知能は問題なさそうだ。それなら、
テレビの画面にもう一人のキャラクターが現れた。
このゲームは最大4人で遊べるゲームであと二人は遊べる。だが、この部屋にほかの人はいない。
その新たに現れたキャラに一瞬だけクイーンが驚きを見せたが、隣で智也がもう一つコントローラーを握っているのを見てすぐに理解できた。
「この子、上手いうえに、負けず嫌いだな」
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「うわ~! 待って! 格ゲーで小さい女の子に負けた!」
隣を見てみると、そこには年相応に笑うただの女の子がいた。
次回は四月六日に更新する予定です~!