第四十二話 空旅
「な~、お兄智也様~。夏休み何か予定ある? みんなで海にでも行かないでしょうか!」
「お前の目的は女子の水着だろ」
「もちろんですとも!」
「そこは隠せよ」
「素直が取り柄ですので」
「まあ、喜んでいるところ残念なんだが。夏休みは妹と海外旅行だ」
「!? 何!? 明美ちゃんと二人っきりで海外旅行だと!?」
「智也は海外に行くのですか?」
「ああ、え~と、海外旅行が当たって。妹と行くことになったよ」
「海外はどこですか?」
「それを言うなら海外のどこですか? だよ。アメリカだ」
「私も一緒に行ってもいいですか?」
「くっ、さすがローズさん。経済力は俺たちとは別の次元にいるのか」
「ローズ、嫌ってわけじゃないんだ。だけど、今回はできれば妹とゆっくりしたい」(と言うか、今回に関しては、実質、明美を人質に取られたようなものだ)
「そうですか。残念です(´・ω・`)」
「チクショ~、これはもう強盗をしてでも!」
「やめろ」
「はぁ~」
そして午前の授業が終わり、クラスのみんなは準備万端だった。
授業終了のチャイムが鳴ると同時に男子が一人立ち上がった。
「窓を開けろ~!」
窓と廊下の席に座っている生徒が全員一斉に立ち上がり窓を開けた。そう、智也の煙幕弾対策。だが
「残念」
カランっと何かが地面に落ちる音がした。其れと同時に激しい閃光とかなり嫌な騒音が教室中に広がった。
そう、授業中はみんなローズに近寄れない。10分休憩ならローズにも負担にならない。だけど、ローズの頼みでお昼は二人で食事をしたいと、それで二回ほど昼休みの時間になると使っていた。さすがにみんな二度も経験すれば皆も警戒するのが当たり前。だが、今回使われたのはスタングレネードだった。
「うわ~! 何も見えない聞こえない~!」
「今度は何!?」
「また智也の仕業か!」
「「「と~も~や~!!!」」」
その日、智也は職員室に呼ばれ。思いっきり叱られた。教室に戻ると。クラスのみんなが智也のほうへと振り向いた。
そして、一人が近づいてきて
「ローズさん! ごめんなさい! 私たちはただもっとあなたと話がしたくて。今後はもっと節操をもって話しかけるから。一緒にお昼ご飯を食べましょ?」
ローズのほうへと目線を向けると、ローズ本人は少しだけ涙を流していた。その涙は多分、いい方の涙だ。
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また早起きか……
「お兄ちゃん~速く着替えて空港に行こ~!」
「まだそんなに焦る時間じゃないって」
この時の智也には、まだあんなことが起こるとは思っていなかった。
最近本当に忙しくなってしまいました
次回は13日の予定です~




