第四十一話 公的
「やあやあ君たち~、すごいね~このパーク開園以来二組目のクリアプレイヤーだよ」
「お兄ちゃん! やったね!」
「やりましたね、津田さん」
「うん、そうだな」
「? どうしたの? あんまりうれしくなさそう」
「? あ、あ~もちろんうれしいよ、ただ……」
「ただ?」
智也は周囲を見回し、智也のほうに向けられた監視カメラを見ている。
「あ、そうそう!」
そう言って男が近づいてくる。そして、耳元で
「余計なことを言わないほうが家族のためですよ。かわいい妹の人生がこのゲームみたいになるのは嫌でしょ?」
「ここ、覚え間違いじゃなければ、公的機関が資金援助をしていたんじゃないんですか?」
「少し、お兄さんとアルバイトの相談をさせてください」
そう言って、奥にある部屋へ移動するように智也に伝える
「話を戻します」
そこからまるで人が変わったようにテンションが上がり
「そう! 公的機関! なんっていい響き! この中で行われることはすべて合法! 世間じゃ許されない実験も! そう !ここでなら!」
「その実験のせいかが、あいつらってことか」
「ばれてしまっているのなら仕方ないですね~、ちゃんと説明書読みました? ゲーム中はゴーグルを外さないでくださいって書いてあったじゃないですか~」
「ええ、ちゃんと読みましたよ。これが本当にただのゲームでしたら従いましたよ。でも、あれはなんだ。あんなの、今の自然界には絶対にいない化け物だらけだ」
「まあ~それは、一緒に働く人だけに公開される。言わば企業秘密ってやつです」
「その企業秘密の一部を知ってしまった人は。嫌です。で返してくれないよね~」
「おっ、説明不要で助かりますよ。できれば知り合いがよかったんだですが、まあ、ほかの三人は確かに生き残りました。ですが、あの3体は本来4人で協力してやっと勝てるほどの強さのはずなんですよ、それを君はひとりで倒しちゃって、おまけにラスボスまで一人で地下に埋めてしまうとは今回の実験で君はあり得ないくらいのイレギュラーなんですよ」
「それで、俺はどうすればいい?」
「いやいや、そんなひどいことをする気はないよ。ただ君にバイトをしてほしいだけでして」
「バイト?」
「もちろん、君はまだ学生だ。学業優先なのも考慮したうえで。次の夏休みの間だけバイトをしてもらう。喜びたまへ! しかも海外だ! わが社の最新の研究施設でバイトしてもらう。もちろん、今回このゲームで生き残った人全員海外旅行に招待するよ。今その説明をみんな外の部屋で受けている頃だろうし」
「物は言いようだな、なんで民間人からこんな形で探すんだ。軍の人を借りればいいだろ」
「まあ、そうしたいところですが、この事実は世界でも数少ない人数しか知らされていない。軍でもこれはレッドファイルと言って上層部の一部でしか見ることのできない」
「だから、民間人から戦闘の天才でも探すってか」
「まあそんなところですよ」
「まあ、誰かに言ったところで高校生の戯言なんて誰も信じないでしょうしね」
「理解が速くて助かります」
次回は3月9日の予定です