第四十話 終わりとはじまり
巨大な衝撃音の後、4人の目の前の壁には巨大な手が壁の角に掴んでいた。
「おいおいマジかよ! こんなでかいやつ、どうやって倒せばいいんだよ!」
「とりあえず距離をとって逃げろ!」
「おい、あいつ追いかけてくるぞ!」
「インドアはサバゲーマーにこれはきついです」
「怖い怖い怖い!」
「明美ちゃんだっけ。こっ、怖かったらかったら、お、俺を頼っていいんだぜ」
「そんなビビってるやつに妹は預けね~よ!」
「はぁ!? びっ、ビビッてなんかね~し!」
智也は後ろを追いかけてくるその巨大な化け物に目をやる、そして周りの三人の服にも何だか違和感を感じる。もしかしたら、少し、賭けてみるのもいいかもしれない。
「なぁ、妹の前でカッコをつけるチャンスをやる。ここで二手に分かれよう。あいつがそっちを追いかけたら、俺と有村が後ろから頭を狙う。もしこっちに来たら。二人は構わず目的地に向かって走れ」(俺の感があってたら、あのでか物はこっち、というより俺を追いかけてくるはず)
「え~」
「そんな、あからさまに嫌そうな顔をするなよ~。男の子はみんな美人の前ではカッコつけたがるものなんだよ。なっ」
「はぁ!?」
「なっ」(威圧)
「ああ、そうだよ」
「有村は異議なし?」
「えっ! はい! ぜひ!!」
「? なんでそんなに乗り気なのかわからないけど、ありがとう、すぐ目の前の分かれ道で別れるぞ」
駅の中を全力疾走していた四人はすぐ手前のところで別れ、後ろの怪物は案の定、智也のいるほうを追いかけてきた。
「こっちが外れくじですね!」
「なんかすごいな」
「何がですか~?」
「それより、あいつの狙いは多分俺だから。次の角でまた別れよう」
「え? それは、どういうことですか」
「俺にも詳しくはわからないんだけど(ついに、俺も命を狙われるようになったのか)とにかくゴールを目指してくれ、あっ、あと。気をつけろよ」
「いいえ、私も手伝います。それに相手はただのAR映像のはずですので、そこまで真剣に」
「だめだ! あっ、ごめん、俺は大丈夫だから」
「はい……」
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さーて、こんなのどうやって相手すればいいのかな。残りの手榴弾は一つ。弾は、拳銃が9発、そして、アサルトライフルが32発のみ。智也は走りながらそれぞれ試してみる。拳銃の銃弾は動きの遅いゾンビたちぐらににしか効かないみたいだ。そして、こいつに関しては数発撃ちこんだ銃弾は皮膚どまり、ライフルの弾でさえ筋肉まで到達するも骨を砕いた音はしない。つまりほぼ無効。
この時点で拳銃の弾の残りはわずか6発、アサルトライフルも25発しかない。まあ、どのみちほぼ無効だから。
「ヴ~ワ!ヴ」
若干大型犬の威嚇に近い声でこっちに迫ってくる巨大な化け物
「あれは、使えるんじゃないか。試してみるしかない」
駅の改札まで走りあがった智也、もちろん明美たちのいる改札じゃなく。智也は走り、そして、最後の手榴弾の安全ピンを抜きそっと地面に置いた。あとからあのでか物が出てきて。智也に襲い掛かってくる。
大きな足音が鳴り響く、その音に気付きすでにゴール地点のについている明美たちが音のなる方へと視線を向ける。三人の目に映ったのは。巨大な化け物がかなりのスピードで智也に接近していくところ。
「お兄ちゃん逃げて~!!」
「逃げろ~!」
列車の中から届かない声を叫ぶ二人
「よお、でか物、そろそろダイエットを考えたほうがいいんじゃないかな~」
完全にホームへ上がってきた大型ゾンビは巨大な胴体とは裏腹に智也に向けて突進していく。
「まだだ、あと少し、もう少し」
突進してくる大型ゾンビを見て、誰だっておびえるだろう。すぐに打ちたくもなる。だが、そのタイミングでしか。そう、
「今!」
そういうと同時に弾を手榴弾に向けて打ち出した。その弾はちょうど手榴弾にあたり、爆発と同時に大型ゾンビの重さと爆発に耐え切れなかった地面は大崩壊を引き起こした。
残り時間わずか1分、巨大な穴はどんどん広がってきていて。そして、すべてを呑み込む勢いで広がる。
智也は必死にゴールへ向けて走り、そして崩れかけのところを思い切りジャンプした。だが、微かに届かなかった。
「ここまでk」
あきらめかけたその時、細くて柔らかい手が、智也の腕をつかんだ。
「おもいから、早く上がってきてください」
そこにいたのはとっくに明美たちと合流していてもおかしくないはずの有村だった。運のいいことに、すぐ隣に足場にちょうどいい鉄筋が突き出ていた。2秒、2秒残し4人でこのゲームをクリアした。
「おめでとうございます! あなたたちがこのゲームをクリアした二組目です! 開始以来の二組目です!」
そう近づいてきたのは狐目をした、怪しい男だった。
少し遅れました!
次回は6日の予定です!