第三十九話 深まる謎
この寒い季節には少しに遭わない気がする短めのスカート、運動部とは思えない細長い手足。
「明美、なのか?」
“ゥゥゥゥゥゥ”
「おい、あけっ」
智也が話し終わる前に襲い掛かってきた。今まで通り、拳銃で眉間を打ちぬこうとしたが、人差し指が動かない。目の前にいるこの動く屍はもしかしたら自分の妹なのかもしれない
その口から垂れてくる赤い鉄の匂いのする液体が、智也の頬をゆっくりと滑り落ちていく。
「チクショ!」
智也は結局手が震えたままトリガーを引けず、思い切りそのゾンビを蹴り飛ばし、とにかく駅のほうに向かった。通路を抜けた先に、月光が差し込む半球型のドームで一人の男がゾンビの群れに囲まれていた。
「チッ、余計なことすんじゃね~よ、こんな奴ら俺一人でも十分だ」
「あ、そう、ジャーついでに、後ろのやつらも頼むわ」
智也は途中で出くわしたゾンビはみんな無視し、全力で走り抜けてきた。もちろん、そいつらは生きのいい生肉を見逃すわけもなく後ろを全力でついてくるわけだ。
「おい、てめー、なんってやつだよ」
「おや? 坊ちゃん あいつらを倒すくらい簡単なんじゃなかったのか? 一人で十分なんだろ? なら頼むよ」
「ふざけるなよ! あんな大軍一人で相手にできるわけないだろ!」
「あれ? そういえばもう一人はどうした~?」
「はあ? あんなヘタレ野郎はもう知らん、あいつ爆発音が聞こえたくらいでしょんべんちびりそうになったうえ。腰抜かして倒れたときに後ろから出てきたやつに首をかまれて即アウト」
「あんたはどうやらそこらの坊ちゃんとは違うみたいだなちょっとだけ見直したぜ」
「けっ、お前もなかなかやるじゃね~か。てっきりとっくに観客席に行ってると思ってたよ」
「そうだ! そいつはどう退場した?」
「? あ~、噛まれた後にスーツから変な液体がしみだして来たら、ゾンビたちがどっかに行って。作業員の人たちがすぐに入ってきて外に連れ出していった」
「そっか、なら、大丈夫そう、だな」(やっぱり、考えすぎ、なのかな)
二人で急速にゲームをどんどん進めていき、東京駅がすぐ目の前に見えてきて。銃声が数発聞こえた。もう時間はだいぶ過ぎて、一時間のタイムリミットまで残り僅か10分
二人で銃声のした方へと駆け寄ったら、そこには角まで追い込まれている明美と有村。
それを見た智也は思わず、実力を発揮し、明美と有村に迫っていたゾンビたちを瞬殺。そして、妹の近くに駆け寄り、強く抱きしめた。
「ちょっ! お兄ちゃん!? どうしたの!? そういう事はできれば人がいないところで」
「ん、あ、バカ」
「いたっ」
「そんな強くたたいてないだろ」
「二人は見てて兄妹というよりは恋人同士に見えるな」
「三人とも、時間がもうないですよ。速くいきましょう」
向かうのは特急の止まっている八王子行きの中央線。その止まっている特急の扉が閉まるギリギリまでに乗り込まないといけない。順調に特急まで近づいていたが、突如巨大な手が智也を襲った。
次回は3月1日の予定です