第三十八話 ゲームは時に、人を殺す
「くそっ」
ライフルの弾を使っても外骨格は貫通できるが、重要な内臓や筋肉部分を傷付つけることができない。
そいつらから逃げながら対処法を考える。
手持ちの殺傷力の最も高い武器の手榴弾は二発しかない、これじゃ一体残してしまう。何か、ほかに使えそうなものは。
走りながら周囲を見ていると、いつの間にやらレストラン街まで逃げていた。
「明美、聞こえるか?」
「何? お兄ちゃん」
「そっちまで戻るのは時間がかかってしまう、可能な限り駅のほうに進んでくれ」
「え~! ちょっ」
「では、健闘を祈る」
レストラン、そうだ! ガス! 智也は全力でレストランの中に逃げ込み。ガスの栓を次々と抜いていく
「がす臭い、ここまでリアルに作ってるんだな」
すべてのガス栓を抜いた後、扉のすぐ近くに隠れた。少しの間隠れていると、足音と何かにぶつかる音がした、すさまじくガス臭い、おまけに何だか少しだけ頭がくらくらしてきた。間違いない、本物のガスだ。
ただのゲーム、だよな? なんで、本物のガスがこの部屋の中に充満するんだ。それに、あのゾンビたち、服に疑似触感を人体に与える機能があるって説明に書いてあったけど。感触があまりにも生々しい。本当に投影された映像なのか?
智也はなるべく高いところに立ち息を吸い再び扉の後ろに隠れた。プロパンガスの重さは空気より重いだからまず下にたまっていく。そして、ついに足音が聞こえてきた。
一体、二体……きっちり三体そろってこっちに向かってくる。
扉が開き三体が部屋の中に入ってきた。試しにだが、ゴーグルをゆっくりと音の立てないように外す。ARの立体映像が映し出されている。というのは全くの嘘だった。ゴーグルを外しても、ちゃんと見えていた。手榴弾の安全ピンを抜き地面に転がし三体の入ってきた扉から駆け出し、扉を閉め、なるべく遠くまで走った。
わずか二秒後に扉が爆風で吹っ飛び。そのまま爆風が後ろから追いかけてきて。智也はギリギリのところですぐ近くの扉を開け、その部屋の中に逃げ込んだ。爆風が過ぎた後、部屋から出ようと扉に手をかけた瞬間
「アツッ。やっぱり、このゲームは何かおかしい」
あっちこっちを見てみると、案の定カメラが回っていた。ただの娯楽施設でここまで作りこむのはおかしい、明美
「明美、聞こえるか、今すぐそっちに行く。おい、明美!」
さっきまで使えてたはずの通信機が使えなくなっている。周りは動きの遅いゾンビたちしかいないから自分はいいとして、明美のほうにもしまた虫型かそれ以上の化け物が出てきたら。
遅いゾンビは適度な距離をとって無視しながら来た道を猛ダッシュ。後ろを振り向くとゾンビたちがまるで波のように襲ってくる、個体差はあるが智也の走りと同じくらい速い個体も、それ以上の個体もちらほらといる。
「ちっ、こいつ! 放せ!」
いくら振りほどこうとしてもその手を放さない、その上走りながらもその口は智也の腕に近づいてくる。もはや唾液なのかどうかすら怪しい緑色をした液体がゾンビの口から滴る。
すぐに立ち止まり、拳銃の銃口を直にゾンビの口の中に突っ込み、トリガーを引いた。
その銃弾は貫通し、ゾンビは糸の切れた操り人形のように倒れたのだが、その手はまだ智也の腕を力強くつかんでいた。
智也はそのまま拳銃の銃弾を三発ゾンビの腕に打ち込み、無理やりまた走り始めた。
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二人と別れた部屋の前についたが、扉を軽くたたいても声がしない。嫌などろどろとした感じが背筋から上がってくる。拳銃を構えて、恐る恐る扉を握り、すぐにでも開くように扉を緩めた。
そして距離をとり、思いっきり扉を蹴る! そしてゾンビが一体奇声を上げながら襲ってきた。
思わずびっくりしてしまった智也は一瞬目を閉じたままトリガーを引き。打ち出された弾はゾンビの左ひざに直撃。そのままゾンビは体勢を崩し智也の経っているすぐ後ろの壁に当たった。当たったのだが、まるで最初っから三足歩行の動物のように、両手と片足で接近してくる。しかもそれなりの速さで。気持ち悪いにもほどがある。すぐにナイフを取り出し、とびかかってきたゾンビを避けながら上からナイフをゾンビの首めがけて振り下ろし。切り裂く。
「切れ味いいな、家のキッチンに欲しい」
そんな余裕っぽいせりふをこぼしたが。二人が入ったはずの部屋の中を見てみると。そこには、おそらく腸であろう物体がお腹から出ている遺体が一つだけ倒れていた。見たところ、男の遺体っぽい、それにごつごつとしているから明美を頼んだあいつじゃない。
安心して、扉を閉めて、今から向かおうとしていた方向に向くと、そこには女性プレイヤーの姿をした
一体のゾンビがいた。
どうでしょうか! なかなかよくかけた気がします! グロいのが苦手な人はごめんなさい!
次回は25日に投稿する予定です!