第四話 必ず、助ける
7分ほど後に、救急車と消防車が警察が来た。
二人はすぐに救急車に搬送されていったが、一人はすでに全身がやけど覆った上に心肺停止状態となっていた。
そんな危険な状態からさらに三分が経過し、十分が経過してしまった(実際十分が過ぎるとほぼ助からない)
医師が到着し、状況を見て顔を横に振った。
すでにそこにあるのは21グラムの抜け、顔もわからないほどにやけどを覆った、一人の死体だった。
「午後18時45分、死亡を確認しました」
目の前で人が死んだ、妹と二人で何もできずただ茫然としていた。
明美は炎の中もがき、苦しみ、最後まで生きようとして倒れていく男を見て、ただおびえてた。
対して智也は、目を大きくし、しかも、口元がかすかに笑っていた。
「ねぇ、お兄ちゃん? お兄ちゃん! 」
? 今智也が正気に戻った。
そして妹のほうに振り向く
「……どうした? 」
「いや、なんでもなかったよ。少し(お兄ちゃんが)怖かっただけ」
「そうか、今日はもう帰ろう」
「ちょっと悪いけど、もう少し待ってくれるかな~」
警察? ではなく刑事ドラマに出てきそうな刑事が二人を呼び止めた。
「ちょっと事情聴取に付き合ってもらいたくてね」
「いや、高校生にこの光景は、精神的に苦痛なので、本日は帰らしてください」
「そうだね~、妹のほうはもう帰ってもらうほうがよさそうだ。だけど、君はまだ平気だろ? 」
チッ、さすが刑事といったところか、感がいい。
「しかたない、だが、妹は先に帰らせておく、いいな、状況説明なら俺一人がいればいいだろ」
「いや、お兄ちゃんと一緒に帰る」
この刑事、なんか危ない
「ごめん、先に帰ってて家まですぐ近くだから。俺もすぐに帰る、むしろお前が家につく前に走って追いついてやるよ」
「すぐに息切れしてそう」
「うっしぇ」
妹が笑顔を見せ
「わかった、でも、必ず追いかけてきてね~」
「あぁ、必ず追いつくよ」
そう言って、妹は一足先に家に向かった
「で、何が聞きたい」
「そうだね~、まずは今回の事件の起因かな~」
「え~と、コンビニに俺が入った後に……」
そのまま淡々と説明を続けた。
「うん、大体の事情はかなったよ。今回、君たちは半分被害者だ。だけど、君が反撃したところは、残念ながらまた後日法廷で言及されるだろう。まあ、罪にはならないだろうけど、あのたばこを捨てた人はもう放火の疑いで捕まった」
「じゃあ、もう帰ってもいいのかな? 」
「すまんがもう少し待っていてくれ、今回とは別に君はもう一つ大きな案件とかかわりがあるんだよね? 」
「ホテルの件か」
「そう、あの事件で君は犯人を見たんじゃないのかな? 」
「いや、すまんが確かに見た、だが、顔までは見えなかった」
「そうか~、残念だ。だけど、もし思い出したら必ず連絡をくださいね?」
名刺を受け取った。
なんだか、この刑事さんからは嫌な感じがする。まるで何か知っているかのように。
「あぁ、わかりましたよ。では、本日はこれで、妹が待っているので」
「引き留めて悪かったね、ではまた後日」
さっさとその場を去った。
「まさか、あの刑事、何か察したのか……まあいいや」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ごめん、待たせた」
「遅いよ~、じゃ、ご飯食べよ」
「そうだな」
二人で晩御飯を済ませ、各自部屋に戻った。
部屋に入り、カバンの中からあの端末を取り出す。
しばらく凝視した後、そっと引き出しの中にしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そのまま何もなく、一週間がたった。
ある日の火曜日、
「やっと終わった~! 」
「じゃっ、部活行ってくる~! 」
「よし! お前ら! カラオケ行くぞ! 」
「「「オー! 」」」
「こら! 男子! 掃除さぼるんじゃないわよ」
「ちっ、また小姑が来たぞ」
「はいはい、やればいいんでしょ」
「後で行くか……」
そんな放課後、いつもの帰り道を歩いていると。
「おい、そこのお前」
智也が振り向くと、そこには志〇〇真実のようなカッコをした男二人が6人の不良を連れていた。
「兄貴、アイツです」
「ほうー、ずいぶんと肝が据わってるじゃねぇか。この人数を相手にビビらないとはな。どうだ、俺の下につかないか? 」
チッ、さすがにこの人数はまずい。
そう思い、思いっきり逃げる。
「おい、こら、てめー逃げてんじゃねぇよ」
「いいさ、あとで妹のほうをかわいがるだけだからな」
足を止めた。
そして、再び、殺意の持った目で睨み返す。
「ひっ、なっ、なんだよ、やるのか? この人数を相手に」
「何人だろうが、明美には手を出させない」
「おいおい、こいつシスコンか? 」
「ハハハ聞いたか? こいつシスコンだぜ? お兄ちゃん! 服脱がせて~! なんつってな! 」
「黙れこのゲス野郎どもが!! 」
そう叫びながら殴り掛かる、一発殴りこむ。だが、すんなりと避けられ、おなかに膝蹴りをくらってしまう。
すぐに立て直そうとするも、再び殴られ、地面に倒れる。
何とかひとりの足をつかみ、思いっきり噛みつく。
「いって! お前犬か! 離しやがれ! 」
そう言って何人かが蹴り続ける。
いつの間にか力が抜けてしまった。
「チッ、気を失いやがった。よし、もうこいつはいい、次は妹のほうをかわいがってやろうぜ」
「まっ」
意識を失ってしまった。
再び目を覚ますと、普段ならもう家に妹が帰ってきている時間だった。
急いで家まで走った。
部屋は真っ黒で、まだだれもいない。
「明美! 」
誰の返事もない、急いで妹の部屋に駆け込んだが、いなかった。
きっとあいつらにさらわれたのだと、智也は思った。
どこにいるのかもわからない、一人で行ったところで、返り討ちにあってしまう。
その時、あの端末が脳内を横切った。
「あれしかない」
すぐに自分の部屋にかけ入り、引き出しを開いて、躊躇せずにアプリを起動した。
予告:明日遠くから見ていた理想郷で夢を見るを更新する予定です。